王子は、長々にゆり起されて、びっくりして目をさましました。
 こんなわけで、王女はとうとうそのばんはにげ出すことが出来ませんでした。

       五

 あくる朝王さまは、王子がちゃんと王女の番をして、昨夜《ゆうべ》のままお部屋に坐《すわ》っているのを見て、びっくりなさいました。
 しかし、ともかく、王女をにがさないで、一《ひ》と晩中《ばんじゅう》番をしたのですから、どうするわけにもいきません。
 王さまはしかたなしに、王子たちをていねいにおもてなしになって、その晩、もう一ど番をさせてごらんになりました。
 そうするとその晩も、王子はまた眠りこんでしまいました。長々とぶくぶくと火の目小僧の三人も、やっぱり同じようにいねむりをはじめました。
 王女はそれを見すまして、今夜もまた鳩になって、部屋をとび出しました。
 するとやはり同じように、長々の頭にぶつかり、火の目小僧に羽根をやかれて、また長々につかまってしまいました。
 王さまはあくる朝になると、またびっくりなさいました。
 そんなことで、三日目の今夜、また王女がしくじったら、たった一人の王女を、どこのだれとも分らない、あの若ものに
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