す。これまで、どんな人が番に来ても、みんな王女をにがしたわけが、これでおわかりになったでしょう。
ところが今夜にかぎって、王女はついやりそこなって、まんまと火の目小僧と長々とに見つかってしまいました。それは鳩になって、窓からとび出すはずみに、暗がりの中にこごんでいた長々の頭の髪へ、ぱたりと羽根をぶつけたからです。長々は、びっくりして目をあけて、
「おや、だれかにげ出したぞ。」と、どなりました。
火の目小僧も目をさまして、
「どっちだ/\。」と言いながら、目の玉に力を入れて、くるくる四方八方をにらみまわしました。するとそのたんびに、目の中からしゅうしゅうと、長い焔《ほのお》がとび出しました。そのために、にげかけていた鳩は、たちまち二つのつばさをまっ黒に焼きこがされてしまいました。
鳩はびっくりして、じきそばにあった高い木の先へとまりました。
そうすると長々は、たちまちするするとからだをのばして、その鳩をひょいと両手でつかまえてしまいました。
鳩はしかたなしに、もとの王女のすがたになって、長々につれられて、お部屋へかえりました。
そんなことはちっとも知らないで、ぐうぐう寝ていた
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