同伴者は実際に恐怖を感じたるがごとく、あわやと見る間に、彼は突然その銃を肩のあたりに押し当てて、ざわめく穀物にむかって二発を射撃したり。その弾《たま》けむりの消えやらぬうちに、われは野獣の吼《ほ》ゆるがごとき獰猛《どうもう》なる叫び声を高く聞けり。モルガンはその銃を地上に投げ捨てて、跳《おど》り上がって現場より走り退《の》きぬ。それと同時に、われはある物の衝突によって地上に激しく投げ倒されたり。煙りにさえぎられて確かに見えざりしが、柔らかく、しかも重き物体が大いなる力をもってわれに衝突したりしと覚ゆ。
われは再び起きあがりて、わが手より取り落としたる銃を拾い上げんとする前に、モルガンが今や最期《さいご》かとも思わるる苦痛の叫びをあぐるを聞けり。さらにまた、その叫び声にまじりて、闘える犬の唸《うな》るがごとき皺枯《しわが》れたる凄《すさ》まじき声をも聞けり。異常の恐怖に襲われて、われはあわてて跳《は》ね起きつつモルガンの走り行きたる方角を打ち見やれば、ああ、二度とは見まじき怖ろしの有様なりしよ。三十ヤードとは隔てざる処《ところ》に、わが友は片膝を突いてありき。その頭《かしら》は甚だしき
前へ
次へ
全20ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ビアス アンブローズ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング