世界怪談名作集
妖物
アンブローズ・ビヤース Ambrose Bierce
岡本綺堂訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)粗木《あらき》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)兇暴|獰悪《ねいあく》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「言+虚」、第4水準2−88−74]《うそ》でない
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       一

 粗木《あらき》のテーブルの片隅に置かれてあるあぶら蝋燭の光りを頼りに、一人の男が書物に何か書いてあるのを読んでいた。それはひどく摺り切れた古い計算帳で、その男は燈火《あかり》によく照らして視るために、時どきにそのページを蝋燭の側へ近寄せるので、火をさえぎる書物の影が部屋の半分をおぼろにして、そこにいる幾人かの顔や形を暗くした。書物を読んでいる男のほかに、そこには八人の男がいるのである。
 そのうちの七人は動かず、物言わず、あらけずりの丸太の壁にむかって腰をかけていたが、部屋が狭いので、どの人もテーブルから遠く離れていなか
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