くり返つて了つた。真つ蒼になつて。
兄の子はそれを見ると、またひいひい泣き立てて母親にむしやぶりつく。それを突き飛ばすやうに振り放すと、むつくり彼女は立ちあがつた。その時はもう元の母親で無かつたのだ。
母親は『ほほヽヽヽヽヽ』とたまらず声を上げて笑ふと、落ちてゐた小さなおちんこを拾ひ上げて、弟の子の血みどろの跨《また》の間に押しつけて見た。彼女の手も無論血みどろであつた。押しつけて見てまたをかしくてをかしくて堪らぬかの如く声を笑ひ出して了つた。
『おちんこが。おほほほほ、おちんこが、おほほほほ……』
気が狂つて了つたのだ。
ところへ田圃から父親がふらりと帰つて来た。何気なく帰つて見るとこの始末である。仰天せずにはゐられない。
『ど、ど、どうしたつてんだ、え、おい、こおれおますよお、三太、やい、次、次、次郎公』
女房はただゲラゲラ笑つてゐた。
次郎公はまたひいひい歔欷《しやく》りあげた。
『小便垂れやがつたからな、おら、チヨンぎつただ。』
『え』と吃驚りすると、ハツと三太の跨ぐらを引つくらかえした。その手がワナワナ顫へ出した。
『と、飛んだ事しやがる、こん畜生。』
一時の驚
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