からし菜の果《み》をとりて泣く人の
その肩に手を置きて、
手を置きて、ただ何となく寄り添ひてまし。


 道ぐさ


芝くさのにほひに
夏の日光り、
幼年のこころに
*Wasiwasi 啼く。

伴《つれ》にはぐれて
うつとりと、
雪駄ひきずる
眞晝どき。

汗ばみし手に
羽蟲きて、
赤き腹部《はら》すり、また、消ゆる
藍色の眼《め》の美くしや。

つかず離《はな》れぬ
その恐怖《おそれ》、
たらたら坂を
またのぼる。

芝くさのにほひに
夏の日光り、
幼年のこころに
Wasiwasi 啼く。
  * 油蝉の方言


 螢


夏の日なかのヂキタリス、
釣鐘状《つりがねがた》に汗つけて
光るこころもいとほしや。
またその陰影《かげ》にひそみゆく
螢のむしのしをらしや。

そなたの首は骨牌《トランプ》の
赤いヂヤツクの帽子かな、
光るともなきその尻は
感冒《かぜ》のここちにほの青し、
しをれはてたる幽靈か。

ほんに内氣《うちき》な螢むし、
嗅《か》げば不思議にむしあつく、
甘い藥液《くすり》の香《か》も濕《しめ》る、
晝のつかれのしをらしや。
白い日なかのヂキタリス。


 青いと
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