、
からし菜の果《み》をとりて泣く人の
その肩に手を置きて、
手を置きて、ただ何となく寄り添ひてまし。
道ぐさ
芝くさのにほひに
夏の日光り、
幼年のこころに
*Wasiwasi 啼く。
伴《つれ》にはぐれて
うつとりと、
雪駄ひきずる
眞晝どき。
汗ばみし手に
羽蟲きて、
赤き腹部《はら》すり、また、消ゆる
藍色の眼《め》の美くしや。
つかず離《はな》れぬ
その恐怖《おそれ》、
たらたら坂を
またのぼる。
芝くさのにほひに
夏の日光り、
幼年のこころに
Wasiwasi 啼く。
* 油蝉の方言
螢
夏の日なかのヂキタリス、
釣鐘状《つりがねがた》に汗つけて
光るこころもいとほしや。
またその陰影《かげ》にひそみゆく
螢のむしのしをらしや。
そなたの首は骨牌《トランプ》の
赤いヂヤツクの帽子かな、
光るともなきその尻は
感冒《かぜ》のここちにほの青し、
しをれはてたる幽靈か。
ほんに内氣《うちき》な螢むし、
嗅《か》げば不思議にむしあつく、
甘い藥液《くすり》の香《か》も濕《しめ》る、
晝のつかれのしをらしや。
白い日なかのヂキタリス。
青いと
前へ
次へ
全140ページ中100ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング