す……青葱畑……

いづこにか夜芝居の篠《しの》きこゆ、本釣《ほんつり》きこゆ、
恐ろしき道すがらその肩にかぢりつき、
手をのべてからめども、首すぢは『お岩』のごとく、
髪のけの青かりしかな、韮《にら》の香の噎《むせび》さへしつ。

月もなく、星もなし、
然《しか》れども或るものは戲《たはむ》[#底本は「たわむれ」と誤植、172−5]れのごと
黄なる毛のにほひして走り過ぐ――
わが乳母の魂《たま》ぎりし聲、
ゆくりなく、眼《め》に入りし
蒼き火の光なき幻影《まぼろし》。

銀色の憂鬱に、夜は青く輝《かがや》きわたり、
しんしんと水の音冴えつ。
倒れしは、わが乳母か、息絶えしその背《せ》より
ふと見れば
幽靈は冷《ひや》やかにほほゑみぬ。――あなやそは乳母。


 願人坊


雪のふる夜《よ》の倉見れば
願人坊《ぐわんにんばう》を思ひ出す。
願人坊は赤頭巾《あかづきん》、
目も鼻もなく、眞白な
のつぺらぽんの赤頭巾。

「ちよぼくれちよんがら、そもそもわつちが
のつぺらぽんのすつぺらぽん、すつぺらぽんののつぺらぽんの、
坊主になつたる所謂因縁《いはくいんねん》きいてもくんねへ、
しかも十
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