《みとせ》のち、乳母はみまかり、
そのごともここに埋《う》もれぬ。
さなり、はや古びし墓に。

あかあかと夕日さす野に、
南瓜花《かぼちやばな》をかしき見れば
いまもはた涙ながるる。
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生の芽生
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 石竹の思ひ出


なにゆゑに人々《ひとびと》の笑ひしか。
われは知らず、
え知る筈なし、
そは稚《いとけな》き三歳《さんさい》のむかしなれば。

暑き日なりき。
物音もなき夏の日のあかるき眞晝なりき。
息ぐるしく、珍らしく、何事か意味ありげなる。

誰《た》が家か、われは知らず。
われはただ老爺《ヂイヤン》の張れる黄色かりし提燈《ちやうちん》を知る。
目のわろき老婆《バン》の土間にて割《さ》きつつある
青き液《しる》出す小さなる貝類のにほひを知る。

わが惱ましき晝寢の夢よりさめたるとき、
ふくらなる或る女の兩手は
彈機《ばね》のごとも慌《あは》てたる熱《あつ》き力もて
かき抱き、光れる掾側へと連れゆきぬ。
花ありき、赤き小さき花、石竹の花。

無邪氣なる放尿…………
幼兒は靜こころなく凝視《みつ》めつつあり。
赤き赤き石竹の花は痛《いた》きまでその瞳にうつり、
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