や》の爺《をぢ》と
その爺《をぢ》の車に乘りて、
市場へと。――途《みち》にねむりぬ。

山の街《まち》、――珍《めづ》ら物見の
子ごころも夢にわすれぬ。
さなり、また、玉名《たまな》少女が
ゆきずりの笑《ゑみ》も知らじな。

その歸さ、木々のみどりに
眼醒《めさ》むれば、鶯啼けり。
山路なり、ふと掌《て》に見しは
梨なりき。清《すゞ》しかりし日。


 鷄頭


秋の日は赤く照らせり。
誰が墓ぞ。風の光に
鷄頭の黄なるがあまた
咲ける見てけふも野に立つ。

母ありき、髪のほつれに
日も照りき。み手にひかれて
かかる日に、かかる野末を、
泣き濡れて歩みたりけむ。

 ものゆかし、墓の鷄頭。
さきの世《よ》か、うつし世にてか、
かかる人ありしを見ずや、
われひとり涙ながれぬ。


 椎の花


木の花はほのかにちりぬ。
日もゆふべ、椎の片岡、
影さむみ、薄ら光に
君泣きぬ、われもすがりぬ。
髪の香か、目見《まみ》のうるみか、
衣《きぬ》そよぎ、裾にほそぼそ、
虫啼きぬ、――かかるうれひに。
ああ、かくて、君よいくとき、
かく縋《すが》り、かくや泣きけむ。
そのかみか、いまか、うつつか、

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