水面《みのも》の燻銀《いぶしぎん》
泣けばちらちら日が光る。
わしがこころの燻銀《いぶしぎん》、
けふもさみしくちらちらと。


 青いソフトに


青いソフトにふる雪は
過ぎしその手か、ささやきか、
酒か、薄荷《はつか》か、いつのまに
消ゆる涙か、なつかしや。


 意氣なホテルの


意氣なホテルの煙突《けむだし》に
けふも粉雪のちりかかり、
青い灯《ひ》が點《つ》きや、わがこころ
何時《いつ》もちらちら泣きいだす。


 霜


柔かなる月の出に
生《なま》じろき百合の根は匂ひいで、
鴉の鳴かで歩みゆく畑、
その畑に霜はふる、銀の薄き疼痛《とうつう》…………

過ぎし日は苦《にが》き芽を蒔きちらし、
沈默《ちんもく》はうしろより啄みゆく、
虎列拉《コレラ》病める農人《のうにん》の厨に
黄なる灯《ひ》の聲もなくちらつけるほど。

霜はふる、土龍《もぐら》の死にし小徑《みち》に、
かつ黒き鳥類《てうるゐ》の足あとに、故郷《ふるさと》のにほひに、
霜はふる、しみじみと鍼《はり》をもてかいさぐりゆく
盲鍼醫《めくらはりい》の觸覺のごと、

思ひ出の月夜なり、銀《しろがね》の痛《いた》き鍍
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