その花ひとつひらけば
あはれや呼吸《いき》のをののく。
昨日《きのふ》を憎むこころの陰影《かげ》にも、時に顫えて
ほのかにさくや、さふらん。
銀笛
[#6字下がる]病弟鐵雄に
思ひ出の夜《よ》の空の
ほの青き瓦斯《ガス》の火に、
しみじみと
銀笛の音ぞうれふ。
そこはかと粉雪《こゆき》ふり、
梅の花黄になげく
その苑《その》の、
身のいたき衰弱《おとろへ》や。
罅《ひび》うすき硝子戸に
肋膜《ろくまく》のわづらひに、
その胸に、
かの沁みる音はほそし。
寫眞屋の燒あとに
鶯の鳴きつかれ、
珈琲店《カフエ》にまた、
薄荷酒《はつかしゆ》の冷《ひ》えゆけば、
靈《たましひ》の病める手に、
げに一夜《ひとよ》、きざまれて、
ひとりまた
音《ね》にかつのる、そのなげきよ。
凾
過ぎし日は鍼醫《はりい》の手凾《てばこ》、
天鵝絨《びらうど》の紫の凾、
柔かに手を觸れて、珍らしく
パツチリとひらいた凾、舶來の凾。
銀かな具のつめたさ、
SORI−BATTEN.びらうどのしとやかさ、
そのびらうどに
薄う光る針。
顫える針をつまんで、
GONSHAN の薄い肌《はだへ
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