き果のうれひよ。
あはれ、あはれ、青き果のうれひよ。
ひそかにも、ひそかにも、われひとり見いでつる
あはれその青き果のうれひよ。

 十一

酒《さけ》を注《つ》ぐきみのひとみの
ほのかにも濡れて愁《うれ》ふる。
さな病みそ街《まち》のどよみの小夜《さよ》ふけて遠く沁むとも。

 十二

女、汝《な》はなにか欲《ほ》りする。
ゆふぐれの、ゆふぐれのゆめふかきもののにほひに、
かくもまた汝《な》とともに接吻《くちつ》けて接吻《くちつ》けて、接吻《くちつ》けてほのかにも泣きつつあらば、あはれ、またなにの願か身にあらむ、ああさるをなほ女、汝《な》はなにか欲《ほ》りする、
ゆふぐれの、ゆふぐれのふたつなき夢のさかひに。

 十三

なやましき晩夏《おそなつ》の日に、
夕日浴び立てる少女の
餘念《よねん》なき手にも揉《も》まれて、
やはらかににじみいでたる
色あかき爪《つま》くれなゐの花。

 十四

わが友よ。
君もまた色青きペパミントの酒に、
かなしみの酒に、
いひしらぬ慰藉《なぐさめ》のしらべを、
今日《けふ》の日のわがごとも、
あはれ、友よ、思ひ知り泣きしことのありや。

 十五

あは
前へ 次へ
全140ページ中64ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング