のうしろに、
灰色の路長きぬかるみに、あはれ濡れつつ
ただひとつまろびたる、燃えのこる夢のごとくに。

 六

あはれ友よ、わかき日の友よ、
今日《けふ》もまた街《まち》にいでて少女らに面《おもて》染むとも、
な嘲《あざ》みそ、われはなほわれはなほ心をさなく、
やはらかき山羊《やぎ》の乳の香《か》のいまも身に失せもあへねば。

 七

見るともなく涙ながれぬ。
かの小鳥
在ればまた來て、
茨《いばら》のなかの紅き實を啄《ついば》み去るを。
あはれまた、
啄み去るを。

 八

女子よ、
汝《な》はかなし、
のたまはぬ汝《な》はかなし、
ただ、ひとつ、
一言《ひとこと》のわれをおもふと。

 九

あはれ、日の
かりそめのものなやみなどてさはわれの悲しく、
※[#「窗/心」、第3水準1−89−54、47−4]照らす夕日の光さしもまた涙ぐましき、
あはれ、世にわれひとり殘されて死ぬとならねど、
わが側《かたへ》遠く去るとも人のまた告げしならねど、
さなり、ただ、かりそめのなやみなるにも。

 十

あはれ、あはれ、色薄きかなしみの葉かげに、
ほのかにも見いでつる、われひとり見いでつる、

前へ 次へ
全140ページ中63ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング