べに忘るれど、
いづこともなき燒栗の秋のにほひを嗅ぐときは
物思ふらむ、嘆くらむ、かつは涙もしたたらむ。
すべり轉《ころ》がる玉の上に、暗き樂屋に、
汗|臭《くさ》き馬の背に、道化芝居の花道に、
玉蜀黍《たうもろこし》を噛みしむる、收穫《とりいれ》の日の
盲目《まうもく》のわかき女に見るごとく、
物の哀《あは》れをしみじみと思ひ知るらむ、淺艸の秋の匂に。
黒い小猫
ちゆうまえんだ[#「ちゆうまえんだ」に傍点]の百合の花、
その花あかく、根はにがし。――
ちゆうまえんだ[#「ちゆうまえんだ」に傍点]に來て見れば
豌豆のつる逕《みち》に匍ひ、
黒い小猫の金茶《きんちや》の眼、
鬼百合の根に晝光る。
べんがら染か、血のいろか、
鹿子《かのこ》まだらの花瓣《はなびら》は裂けてしづかに傾きぬ。
裂けてしづかに輝ける褐《くり》の花粉の眩《まば》ゆさに、
夜の秘密を知るやとて
よその女のぢつと見し昨《きそ》の眼つきか、金茶の眼、
なにか凝視《みつ》むる、金茶の眼。
黒い小猫の爪はまた
鋭く土をかきむしる。
百合の疲れし球根《きゆうこん》のその生《なま》じろさ、薄苦《うすにが》さ、
掻
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