…………
そなたは何を見てゐる、彎曲《ゆみなり》の路から、
斷層面の赤いてりかへしの下から、
前かがみに腰をかがめた、あちら向きの男よ。
わたしは何時も長閑《のどか》な汝《そなた》の頭上から、
瀟洒な外輪船《ぐわいりんせん》の出てゆく油繪の夕日に魅《み》せられる。
病氣のとき、ねむるとき、さうして一人で泣いてゐる時、
ほんのしばらく立ちどまり、尿する和蘭陀人のこころよ。
水中のをどり
色あかきゐもりの腹のひとをどり、
水の痛《いた》さにひとをどり。
腹の赤さは血のごとく、
水の痛《いた》さは石炭酸を撒《ふ》るごとし。
時は水無月、日は眞晝、
ゐもりの小さきみなし兒は
尻尾《しつぽ》もふらず、掌《て》も開《あ》かず、
たつた、ふたつの眼を開《あ》けて
ついとかへりぬひとをどり…………
風はつめたく、山ふかく、
青い松葉が針のごと光りて落つるたまり水。
色あかきゐもりの腹のひとをどり、
水の痛さにひとをどり。
怪しき思
われは探しぬ、色黒き天鵞絨《びろうど》の蝶、
日ごと夜ごとに針《ピン》を執り、テレピンを執り、
かくて殺しぬ、突き刺しぬ、ちぎり、なすりぬ。
鬼
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