百合の赤き花粉を嗅ぐときは
ひとり呪ひぬ、引き裂きぬ、噛みぬ、にじりぬ。
金文字の古き洋書の鞣皮《なめしがは》
ああ、それすらも黒猫に爪をかかしつ。

われは愛しぬ、くるしみぬ………顫へ、おそれぬ。
怪しさは蝋のほのほの泣くごとく、
青き蝮《まむし》のふたつなき觸覺のごと、
われとわが身をひきつつみ、かつ、かきむしる。
美くしき少年のえもわかぬ性の憂鬱。


 金縞の蜘蛛


ゆく春のあるかなきかの絲に載り、
身を滑《すべ》らする金縞《きんじま》の蜘蛛《くも》。
雨ふれば濡れそぼち、
日のてれば光りかがやく金縞の蜘蛛。
その青き金縞の蜘蛛。

怪しく美くしき眼は
晝の年増《としま》の秘密をば見て見ぬふりにうち顫へ、
うら耻かしき少年の夢を見透かし、
明日《あす》死ぬるわが妹の命《いのち》をかひた[#「ひた」に傍点]と凝視《みつ》むる。

ゆく春のあるかなきかの絲に載り、
身を滑《すべ》らする金縞の蜘蛛。
人|來《く》れば肢《あし》を縮《ちゞ》め、
蟲|來《く》れば捕《と》りて血を吸ふ金縞の蜘蛛。
ただ一日《ひとひ》青く光れる金縞の蜘蛛。


 兄弟


われらが素肌《すはだ》のさみしさ
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