ん》がうろつき、
黒猫がふわりとあるく…………夜は黒。

夜は黒…………おそろしい、忍びやかな盜人《ぬすびと》の黒。
定九郎の蛇目傘《じやのめがさ》、
誰だか頸《くび》すぢに觸《さわ》るやうな、
力のない死螢の翅《はね》のやうな。

夜は黒…………時計の數字の奇異《ふしぎ》な黒。
血潮のしたたる
生《なま》じろい鋏を持つて
生膽取《いきぎもとり》のさしのぞく夜。

夜は黒…………瞑《つぶ》つても瞑つても、
青い赤い無數《むすう》の靈《たましひ》の落ちかかる夜。
耳鳴《みみなり》の底知れぬ夜《よる》。
暗い夜。
ひとりぼつちの夜。

夜…………夜…………夜…………


 感覺


わが身は感覺のシンフオニー、
眼は喇叭、
耳は鐘、
唇は笛、
鼻は胡弓。

その病める頬を投げいだせ、
たんぽぽの光りゆく草生《くさぶ》に、
肌《はだへ》はゆるき三味線の
三の絲の手ざはり。

見よ、少年の秘密は
玉蟲のごとく、
赤と青との甲斐絹《かひき》のごとく、
滑りかがやく官能のうらおもて。

その感覺を投げいだせ――
黒猫は眼を据ゑてたぶらかし、
酸漿《ほほづき》は眞摯《まじめ》に孕《はら》み、
緑いろ
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