、第4水準2−12−11、339−4]《まは》せ、※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、339−4]《まは》せ、水ぐるま、
けふの午《ひる》から忠信《ただのぶ》が隈《くま》どり紅《あか》いしやつ面《つら》に
足どりかろく、手もかろく
狐六法《きつねろつぽふ》踏みゆかむ花道の下、水ぐるま…………

※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、340−1]《まは》せ、※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、340−1]せ、水ぐるま、
雨に濡れたる古むしろ、圓天井のその屋根に、
青い空透き、日の光、
七寶《しつぽう》のごときらきらと、化粧部屋《けしやうべや》にも笑ふなり。

※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、340−5]《まは》せ、※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、340−5]せ、水ぐるま、
梅雨《つゆ》の晴れ間《ま》の一日《いちにち》を、せめて樂しく浮かれよと
※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、340−7]り舞臺も滑《すべ》るなり、
水を汲み出せ、そのしたの葱の畑《はたけ》のたまり水。

※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、341−1]《まは》せ、※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、341−1]せ、水ぐるま、
だんだら幕の黒と赤、すこしかかげてなつかしく
旅の女形《おやま》もさし覗く、
水を汲み出せ、平土間《ひらどま》の、田舎芝居の韮畑《にらばたけ》。

※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、341−5]《まは》せ、※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11、341−5]せ、水ぐるま、
はやも午《ひる》から忠信《ただのぶ》が紅隈《べにくま》とったしやつ面《つら》に
足どりかろく、手もかろく、
狐六法《きつねろつぽふ》踏みゆかむ花道の下、水ぐるま…………


 韮の葉


芝居小屋の土間のむしろに、
いらいら沁みるものあり。
畑《はたけ》の土のにほひか、
昨日《きのふ》の雨のしめりか。
あかあかと阿波の鳴門の巡禮が
泣けば…………ころべば…………韮《にら》の葉が…………

芝居小屋の土間のむしろに、
ちんちろりんと鳴いづる。
廉《やす》おしろひのにほひか、
けふの入り日の顫へか、
あかあかと、母のお弓がチヨボにのり
泣けば…………なげけば…………蟲の音が…………

芝居小屋の土間のむしろに
何時しか沁みて芽に出《づ》る
まだありな
前へ 次へ
全70ページ中69ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング