來たんですつて。柳河語。
2、Odan はわたしなり、Tinco Sa は感嘆詞なり、全體の意味はあら厭だよ、まあ。同上。
[#ここで字下げ終わり]


 道ゆき


鰡《ぼら》と黒鯛《ちんのいを》と、
黒鯛《ちんのいを》と、
鰡と、のうえ[#「のうえ」は小さい文字]
肥前山をば、やんさのほい[#「やんさのほい」は小さい文字]、けさ越えた、ばいとこずいずい[#「ばいとこずいずい」は小さい文字]。

後家《ごけ》と、按摩《あんま》さんと、
按摩さんと、
後家と、のうえ[#「のうえ」は小さい文字]
蜜柑畑から、やんさのほい[#「やんさのほい」は小さい文字]、昨夜《よべ》逃げた、ばいとこずいずい[#「ばいとこずいずい」は小さい文字]。


 目くばせ


門づけのみふし[#「みふし」に「*」の著者註]語《がた》りがいうことに
高麗烏《かうげがらす》のあのこゑわいな。
晝の日なかに生れた赤子
埋《う》めた和尚が一人《ひとり》あるぞえ。

古寺の高麗烏《かうげがらす》のいふことに、
みふし[#「みふし」に傍点]語《がた》りのあの絃《いと》わいな。
今日《けふ》も今日とて、かんしやくもちの
振《ふ》られ男がそこいらに。
 * 鄙びた粗末なる一種の琵琶を抱きて卑近なる物語を歌ひながらゆく盲目の門づけなり、地方特殊のものにてその歌ひものをみふし[#「みふし」に傍点]と云ふ。[#この註、2行目以降は3字下げ]


 あひびき


きつねのてうちん[#「きつねのてうちん」に「*」の著者註]見つけた、
蘇鐵のかげの黒土《くろつち》に、
黄いろなてうちん見つけた、
晝も晝なかおどおどと、
男かへしたそのあとで、
お池のふちの黒土に、
きつねのてうちん見つけた。
 *毒茸の一種、方言、色赤く黄し。


 水門の水は


水門《すゐもん》の水は
兒をとろとろと渦をまく。
酒屋男は
半切《はんぎり》鳴らそと櫂を取る。
さても、けふ日のわがこころ
りんきせうとてひとり寢る。


 六騎


御|正忌《しやうき》[#「御正忌」に「*」の著者註]參詣《めえ》らんかん、
情人《ヤネ》が髪結ふて待《ま》つとるばん。

御正忌|參詣《めえ》らんかん、
寺の夜《よ》あけの細道《ほそみち》に。

鐘が鳴る、鐘が鳴る。
逢うて泣けとの鐘が鳴る。
 *親鸞上人の御正忌なり。


 梅雨の晴れ間


※[#「廴+囘」
前へ 次へ
全70ページ中68ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング