[#「窗/心」、第3水準1−89−54]の絵硝子《ゑがらす》
あがりぬ――ひびく舗石《しきいし》。

見よ、女《め》が髪のたわめき
濡れこそかかれ、このとき
つと寄《よ》り、男、みだらの
接吻《くちつけ》――にほふ舗石《しきいし》。

ほど経て※[#「窗/心」、第3水準1−89−54]を閑《さ》す音《おと》。
枝垂柳《しだれやなぎ》のしげみを、
赤き港の自働車《じどうしや》
けたたましくも過《す》ぎぬる。

ややあり、ほのに緋《ひ》の帯、
水色うつり過《す》ぐれば、
縺《もつ》れぬ、はやも、からころ、
かろき木履《きぐつ》のすががき。
[#地付き]四十年九月


  驟雨前

長月《ながつき》の鎮守《ちんじゆ》の祭《まつり》
からうじてどよもしながら、
雨《あめ》もよひ、夜《よ》もふけゆけば、
蒸しなやむ濃《こ》き雲のあし
をりをりに赤《あか》くただれて、
月あかり、稲妻《いなづま》すなる。

このあたり、だらだらの坂《さか》、
赤楊《はん》高き小学校の
柵《さく》尽きて、下《した》は黍畑《きびばた》
こほろぎぞ闇に鳴くなる。
いづこぞや女声《をみなごゑ》して
重たげに雨戸《あまど》繰
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