凪《なぎ》にうかびて
壁白き浜のかなたは
あたたかに物売る声す。
波もなき港の真昼《まひる》、
白銀《しろがね》の挿櫛《さしぐし》撓《たは》み
いま遠く二つら三つら
水の上《へ》をすべると見つれ。
波もなき港の真昼、
また近く、二つら三つら
飛《とび》の魚すべりて安《やす》し。
夕
あたたかに海は笑《わら》ひぬ。
花あかき夕日の窓に、
手をのべて聴くとしもなく
薔薇《さうび》摘《つ》み、ほのかに愁《うれ》ふ。
いま聴くは市《いち》の遠音《とほね》か、
波の音《ね》か、過ぎし昨日《きのふ》か、
はた、淡《あは》き今日《けふ》のうれひか。
あたたかに海は笑ひぬ。
ふと思ふ、かかる夕日《ゆふひ》に
白銀《しろがね》の絹衣《すずし》ゆるがせ、
いまあてに花|摘《つ》みながら
かく愁《うれ》ひ、かくや聴《き》くらむ、
紅《くれなゐ》の南極星下《なんきよくせいか》
われを思ふ人のひとりも。
羅曼底の瞳
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この少女はわが稚きロマンチツクの幻象也、仮にソフィヤと呼びまゐらす。
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美《うつ》くしきソフィヤの君《きみ》。
悲《かな》しく
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