も恋《こひ》しくも見え給ふわがわかきソフィヤの君《きみ》。
なになれば日もすがら今日《けふ》はかく瞑目《めつぶ》り給ふ。
美《うつ》くしきソフィヤの君《きみ》、
われ泣けば、朝な夕《ゆふ》なに、
悲《かな》しくも静《しづ》かにも見ひらき給ふ青き華《はな》――少女《をとめ》の瞳《ひとみ》。
ソフィヤの君《きみ》。
[#改丁]

   古酒

こは邪宗門の古酒なり。近代白耳義の所謂フアンドシエクルの神経には柑桂酒の酸味に竪笛の音色を思ひ浮かべ梅酒に喇叭を嗅ぎ、甘くして辛き茴香酒にフルウトの鋭さをたづね、あるはまたウヰスキイをトロムボオンに、キユムメル、ブランデイを嚠喨として鼻音を交へたるオボイの響に配して、それそれ匂強き味覚の合奏に耽溺すと云へど、こはさる驕りたる類にもあらず。黴くさき穴倉の隅、曇りたる色硝子の※[#「窗/心」、第3水準1−89−54]より洩れきたる外光の不可思議におぼめきながら煤びたるフラスコのひとつに湛ゆるは火酒か、阿刺吉か、又はかの紅毛の※[#「酉+珍のつくり」、169−8]※[#「酉+蛇のつくり」、第4水準2−90−34]の酒か、えもわかねど、われはただ和蘭わたりの
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