と滴《したた》るばかり
激瀾《おほなみ》の飛沫《しぶき》に濡れて、
弥《いや》さらに匂ひ閃《ひら》めく
火のごとき少女《をとめ》のむれよ。
[#ここから2字下げ]
寄せ返し、遠く消えゆく
塩※[#「さんずい+區」、第3水準1−87−4]《しほなわ》暗き音《ね》を聴け。
[#ここで字下げ終わり]
ああ薔薇《さうび》、汝《なれ》にむかへば
わかき日のほこりぞ躍る。
薔薇《さうび》、薔微《さうび》、あてなる薔薇《さうび》。


  紐

海の霧にほやかなるに
灯《ひ》も見ゆる夕暮のほど、
ほのかなる旅籠《はたご》の窓に
在《あ》るとなく暮《く》れもなやめば、
やはらかき私語《ささやき》まじり
咽《むせ》びきぬ、そこはかとなく、
火に焼くる薔薇《さうび》のにほひ。

ああ、薔薇《さうび》、暮れゆく今日《けふ》を
そぞろなり、わかき喘《あへぎ》に
図《はか》らずも思ひぞいづる。
そは熱《あつ》き夏の渚辺《なぎさべ》、
濡髪《ぬれがみ》のなまめかしさに、
女《をみな》つと寝《ね》がへりながら、
みだらなる手して結びし
色|紅《あか》き韈《くつした》の紐《ひも》。


  昼

蜜柑船《みかんぶね》
前へ 次へ
全122ページ中93ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング