わが胸より落つる
わかき血の
燃《もゆ》る滴《したたり》。


  海辺の墓

われは見き、
いつとは知らね、
薄《うす》あかるにほひのなかに
夢ならずわかれし一人《ひとり》、
ものみなは涙のいろに
消えぬとも。
ああ、えや忘る。
かのわかき黒髪のなか、
星のごと濡れてにほひし
天色《そらいろ》の勾玉《まがたま》七つ。

われは見ぬ、
漂浪《さすら》ひながら、
見もなれぬ海辺の墓に
うつつにも眠れる一人《ひとり》
そことなき髪のにほひの
ほのめきも、
ああ、えや忘る。
いま寒き夕闇《ゆふやみ》のそこ、
星のごと濡れてにほへる
天色《そらいろ》の露草《つゆくさ》七つ。


  渚の薔薇

紀《き》の南《みなみ》、白良《しらら》の渚《なぎさ》、
荒き灘《なだ》高く砕《くだ》けて
天《そら》暗《くら》う轟《とどろ》くほとり、
ひとならび夕陽《ゆふひ》をうけて
面《おも》ほてり、むらがり咲ける
色|紅《あか》き薔薇《さうび》の族《ぞう》よ。
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瞬《またた》く間《ま》、間近《まぢか》に寄せて
崩《なだ》れうつ浪の穂を見よ。
[#ここで字下げ終わり]
今しさ[#「さ」に傍点]
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