つつ湿《し》める径《みち》の隈《くま》。

風吹かず。
仰ふげば空《そら》は
烈々《れつれつ》と鬱金《うこん》を篩《ふる》ふ蕋《ずゐ》の花。

さらに、聞く、
爛《ただ》れ、饐《す》えばみ、
ふつふつ[#「ふつふつ」に傍点]と苦痛《くつう》をかもす蜜の息。

楽欲《げうよく》の
極みか、甘き
寂寞《じやくまく》の大光明《だいくわうみやう》、に喘《あへ》ぐ時。

人界《にんがい》の
七谷《ななたに》隔《へだ》て、
丁々《とうとう》と白檀《びやくだん》を伐《う》つ斧《をの》の音《おと》。
[#地付き]四十年三月


  華のかげ

時《とき》は夏、血のごと濁《にご》る毒水《どくすゐ》の
鰐《わに》住む沼《ぬま》の真昼時《まひるどき》、夢ともわかず、
日に嘆《なげ》く無量《むりやう》の広葉《ひろは》かきわけて
ほのかに青き青蓮《せいれん》の白華《しらはな》咲けり。

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ここ過《よ》ぎり街《まち》にゆく者、――
婆羅門《ばらもん》の苦行《くぎやう》の沙門《しやもん》、あるはまた
生皮《なまかわ》漁《あさ》る旃陀羅《せんだら》が鈍《にぶ》き刃《は》の色、
たまたまに火の布《
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