と》もなし。
載《の》せきたる板硝子《いたがらす》過《す》ぐるとき車|燬《や》きつつ
落つる日の照りかへし、そが面《おもて》噎びあかれば
室内《むろぬち》の汚穢《けがれ》、はた、古壁に朽ちし鉞《まさかり》
一斉《ひととき》に屠《はふ》らるる牛の夢くわとばかり呻《うめ》き悶《もだ》ゆる。
街《まち》の子は戯《たはむ》れに空虚《うつろ》なる乳《ち》の鑵《くわん》たたき、
よぼよぼの飴売《あめうり》は、あなしばし、ちやるめらを吹く。
くわとばかり、くわとばかり、
黄《き》に光る向《むか》ひの煉瓦《れんぐわ》
くわとばかり、あなしばし。――
[#地付き]悪の※[#「窗/心」、第3水準1−89−54] 畢――四十一年二月
蟻
おほらかに、
いとおほらかに、
大《おほ》きなる鬱金《うこん》の色の花の面《おも》。
日は真昼《まひる》、
時は極熱《ごくねつ》、
ひたおもて日射《ひざし》にくわつ[#「くわつ」に傍点]と照りかへる。
時に、われ
世《よ》の蜜《みつ》もとめ
雄蕋《ゆうずゐ》の林の底をさまよひぬ。
光の斑《ふ》
燬《や》けつ、断《ちぎ》れつ、
豹《へう》のごと燃《も》え
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