二 疲れ

あはれ、いま暴《あら》びゆく接吻《くちつけ》よ、肉《ししむら》の曲《きよく》。……

かくてはや青白く疲《つか》れたる獣《けもの》の面《おもて》
今日《けふ》もまた我《われ》見据《みす》ゑ、果敢《はか》なげに、いと果敢《はか》なげに、
色|濁《にご》る窓《まど》硝子《がらす》外面《とのも》より呪《のろ》ひためらふ。

いづこにかうち狂《くる》ふ※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]オロンよ、わが唇《くちびる》よ、
身をも燬《や》くべき砒素《ひそ》の壁《かべ》夕日さしそふ。

   三 薄暮の負傷

血潮したたる。

薄暮《くれがた》の負傷《てきず》なやまし、かげ暗《くら》き溝《みぞ》のにほひに、
はた、胸に、床《ゆか》の鉛《なまり》に……

さあれ、夢には列《つら》なめて駱駝《らくだ》ぞ過《す》ぐる。
埃及《えじぷと》のカイロの街《まち》の古煉瓦《ふるれんが》
壁のひまには砂漠《さばく》なるオアシスうかぶ。
その空にしたたる紅《あか》きわが星よ。……

血潮したたる。

   四 象のにほひ

日をひと日。
日をひと日。

日をひと日、光なし、色も盲《めし》ひて

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