《よ》に入る子らが身の運《はこ》び、太皷ぞ鳴れる。
水落つ、たた[#「たた」に傍点]と…………もの甘く、あるひは赤く、
うらわかきわれの素肌《すはだ》に沁《し》みきたる
鉄《てつ》のにほひと、腐《くさ》れゆく石鹸《しやぼん》のしぶき。
水面《みのも》には荷足《にたり》の暮れて呼ぶ声す、太皷ぞ鳴れる。
水落つ、たた[#「たた」に傍点]と…………たた[#「たた」に傍点]とあな音色《ねいろ》柔《やは》らに、
大理石《なめいし》の苦悩《なやみ》に湯気《ゆげ》は濃《こ》く、温《ぬ》るく、
鈍《にぶ》きどよみと外光《ぐわいくわう》のなまめく靄に
疲《つか》れゆく赤き都会《とくわい》のらうたげさ、太皷ぞ鳴れる。
[#地付き]四十一年八月
入日の壁
黄《き》に潤《しめ》る港の入日《いりひ》、
切支丹《きりしたん》邪宗《じやしゆう》の寺の入口《いりぐち》の
暗《くら》めるほとり、色古りし煉瓦《れんぐわ》の壁に射かへせば、
静かに起る日の祈祷《いのり》、
『ハレルヤ』と、奥にはにほふ讃頌《さんしよう》の幽《かす》けき夢路《ゆめぢ》。
あかあかと精舎《しやうじや》の入日。――
ややあれば大風
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