く雲の青みの階調《シムフオニヤ》、
はた、さまざまのあこがれの吐息《といき》の薫《くゆり》、
薄れつつうつらふきはの日のおびえ。
ああ、はた、響け、嵯嘆《なげかひ》の樅《もみ》のふたもと。
饐《す》え暗《くら》む樅のふたもと。
燃えのこる想《おもひ》のうるみひえびえと、
はや夜《よ》の沈黙《しじま》しのびねに弾きも絶え入る
列並《つらなみ》の山のくるしみ、ひと叢《むら》の
柑子《かうじ》の靄のおぼめきも音《ね》にこそ呻《うめ》け、
おしなべて御龕《みづし》の空《そら》ぞ饐《す》えよどむ。
ああ、見よ、悩《なや》む、嗟嘆《なげかひ》の樅《もみ》のふたもと。
暮れて立つ樅《もみ》のふたもと。
声もなき悲願《ひぐわん》の通夜《つや》のすすりなき
薄らの闇に深みゆく、あはれ、法悦《ほふえつ》、
いつしかに篳篥《ひちりき》あかる谷のそら、
ほのめき顫《ふる》ふ月魄《つきしろ》のうれひ沁みつつ
夢青む忘我《われか》の原の靄の色。
ああ、さは顫《ふる》へ嗟嘆《なげかひ》の樅《もみ》のふたもと。
[#地付き]四十一年二月
夕日のにほひ
晩春《おそはる》の夕日《ゆふひ》の中《なか》に、
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