しどけなく張りもつらねて、
調《しら》ぶるは下司《げす》のうた、はしやげる曲馬《チヤリネ》の囃子《はやし》。

その幕の羅馬字《らうまじ》よ、くるしげに馬は嘶《いなな》き、
大喇叭《おほらつぱ》鄙《ひな》びたる笑《わらひ》してまたも挑《いど》めば
生《なま》あつき色と香《か》とひとさやぎ歎《なげ》きもつるる。

   E 不調子

われは見る汝《な》が不調《ふてう》、――萎《しな》びたる瞳の光沢《つや》に、
衰《おとろへ》の頬《ほ》ににほふおしろひの厚き化粧《けはひ》に、
あはれまた褪《あ》せはてし髪の髷《まげ》強《つよ》きくゆりに、
肉《ししむら》の戦慄《わななき》を、いや甘き欲《よく》の疲労《つかれ》を。

はた思ふ、晩夏《おそなつ》の生《なま》あつきにほひのなかに、
倦《う》みしごと縺《もつ》れ入るいと冷《ひ》やき風の吐息《といき》を。
新開《しんかい》の街《まち》は※[#「金+肅」、第3水準1−93−39]《さ》びて、色赤く猥《みだ》るる屋根を、
濁りたる看板《かんばん》を、入り残る窓の落日《いりひ》を。

なべてみな整《ととの》はぬ色の曲《ふし》……ただに鋭《するど》き
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