庭《うらには》に、煉瓦のもとに、
白楊《はくやう》のしどろもどろの香《か》のかげに、
窓の硝子《がらす》に、
まじまじと日向《ひなた》求《もと》むる病人《やまうど》は目《め》も悩《なや》ましく
見ぞ夢む、暮春《ぼしゆん》の空と、もののねと、
水と、にほひと。

ひりあ、ひすりあ。
しゆツ、しゆツ……

なやまし、ただにやはらかに、くらく、まぶしく、
また懈《た》ゆく。

ひりあ、ひすりあ。
しゆツ、しゆツ……
[#地付き]四十一年三月


  噴水の印象

噴水《ふきあげ》のゆるきしたたり。――
霧しぶく苑《その》の奥、夕日《ゆふひ》の光、
水盤《すゐばん》の黄《き》なるさざめき、
なべて、いま
ものあまき嗟嘆《なげかひ》の色。

噴水《ふきあげ》の病《や》めるしたたり。――
いづこにか病児《びやうじ》啼《な》き、ゆめはしたたる。
そこここに接吻《くちつけ》の音《おと》。
空は、はた、
暮れかかる夏のわななき。

噴水《ふきあげ》の甘きしたたり。――
そがもとに痍《きず》つける女神《ぢよじん》の瞳。
はた、赤き眩暈《くるめき》の中《うち》、
冷《ひや》み入る
銀《ぎん》の節《ふし》、雲
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