《うち》。
[#ここで字下げ終わり]
[#地付き]四十一年六月
暮春
ひりあ、ひすりあ。
しゆツ、しゆツ……
なやまし、河岸《かし》の日のゆふべ、
日の光。
ひりあ、ひすりあ。
しゆツ、しゆツ……
眼科《がんくわ》の窓《まど》の磨硝子《すりがらす》、しどろもどろの
白楊《はくやう》の温《ぬる》き吐息《といき》にくわとばかり、
ものあたたかに、くるほしく、やはく、まぶしく、
蒸し淀《よど》む夕日《ゆふひ》の光。
黄《き》のほめき。
ひりあ、ひすりあ。
しゆツ、しゆツ……
なやまし、またも
いづこにか、
なやまし、あはれ、
音《ね》も妙《たへ》に
紅《あか》き嘴《はし》ある小鳥らのゆるきさへづり。
ひりあ、ひすりあ。
しゆツ、しゆツ……
はた、大河《おほかは》の饐《す》え濁《にご》る、河岸《かし》のまぢかを
ぎちぎちと病《や》ましげにとろろぎめぐる
灰色《はいいろ》黄《き》ばむ小蒸汽《こじようき》の温《ぬ》るく、まぶしく、
またゆるくとろぎ噴《ふ》く湯気《ゆげ》
いま懈《た》ゆく、
また絶えず。
ひりあ、ひすりあ。
しゆツ、しゆツ……
いま病院《びやうゐん》の裏
前へ
次へ
全122ページ中51ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング