ふげばほのめくゆめの白楊《ぽぴゆら》、
愁《うれひ》の水《み》の面《も》を櫂《かい》はすべる。
吐息《といき》のをののき、君が眼《め》ざし
やはらに縺《もつ》れてたゆたふとき、
光のひとすぢ――顫《ふる》ふ白楊《ぽぴゆら》
文月《ふづき》の香炉《かうろ》に濡れてけぶる。
さてしもゆるけくにほふ夢路《ゆめぢ》、
したたりしたたる櫂《かい》のしづく、
薄らに沁《し》みゆく月のでしほ
ほのかにわれらが小舟《をふね》ぞゆく。
ほのめく接吻《くちつけ》、からむ頸《うなじ》、
いづれか恋慕《れんぼ》の吐息《といき》ならぬ。
夢見てよりそふわれら、白楊《ぽぴゆら》、
水上《みなかみ》透《す》かしてこころ顫《ふる》ふ。
[#地付き]四十一年二月
[#改丁]
外光と印象
近世仏国絵画の鑑賞者をわかき旅人にたとへばや。もとより Watteau の羅曼底、Corot の叙情詩は唯微かにそのおぼろげなる記憶に残れるのみ。やや暗き Fontainebleau の森より曇れる道を巴里の市街に出づれば Seine の河、そが上の船、河に臨める 〔Cafe'〕 の、皆「刹那」の如くしるく明かなる Man
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