ノ、瀞《とろ》みうつれる
晩春《おそはる》の※[#「窗/心」、第3水準1−89−54]閉《とざ》す片側街《かたかはまち》よ、
暮れなやむ靄の内皷《うちつづみ》をうてる。
いづこにか、もの甘き蜂の巣《す》のこゑ。
幼子《をさなご》のむれはまた吹笛《フルウト》鳴らし、
白楊《はくやう》の岸《きし》にそひ曇り黄《き》ばめる
教会《けうくわい》の硝子※[#「窗/心」、第3水準1−89−54]《がらすまど》ながめてくだる。
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日はのこる両側《もろがは》の梢《こずゑ》にあかく、
さはあれど、暮れ惑《まど》ふ下枝《しづえ》のゆらぎ……
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またあれば、公園《こうゑん》の長椅子《ベンチ》にもたれ、
かなたには恋慕《れんぼ》びと苦悩《なやみ》に抱く。
そのかげをのどやかに嬰児《あかご》匍《は》ひいで
鵞《が》の鳥《とり》を捕《と》らむとて岸《きし》ゆ落ちぬる。
水面《みのも》なるひと騒擾《さやぎ》、さあれ、このとき、
驀然《ましぐら》に急ぎくる一列《ひとつら》の郵便馬車《いうびんばしや》よ、
薄闇《うすやみ》ににほひゆく赤き曇《くもり》の
快《こころよ》
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