リ《はな》さき、
野《の》に赤き駒《こま》は斃《たふ》れむ。
うらうへに病《や》ましき現象《きざし》
今日《けふ》もまたどよみわづらふ。
あな哀《あは》れ、咋《きそ》の日も銅《あかがね》のなやみかかりき。
あな哀《あは》れ、明日《あす》もまた鈍《にぶ》き血の濁《にごり》かからむ。
聴くからにただ熱《あつ》し、心は重し。
思ふだにいやくるし、愁は重し。
[#地付き]四十年十二月
ふえのね
ほのかに見ゆる青き頬《ほ》、
あな、あな、玻璃《はり》のおびゆる。
かなたにひびく笛のね、……
青き頬《ほ》ほのに消えゆく。
室《むろ》にもつのるふえのね、……
ふたつのにほひ盲《し》ひゆく。
きこえずなりぬふえのね、……
内《うち》と外《そと》とのなげかひ。
またしも見ゆる青き頬《ほ》。
あな、また玻璃《はり》のおびゆる。
[#地付き]四十一年二月
下枝のゆらぎ
日はさしぬ、白楊《はくやう》の梢《こずゑ》に赤く、
さはあれど、暮れ惑《まど》ふ下枝《しづえ》のゆらぎ……
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水《みづ》の面《も》のやはらかきにほひの嘆《なげき》
波もなき病《や》ましさ
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