ノひとつ、
また、ひとつ……
[#地付き]四十一年二月
耽溺
あな悲《かな》し、紅《あか》き帆《ほ》きたる。
聴《き》けよ、今《いま》、紅《あか》き帆《ほ》きたる。
白日《はくじつ》の光の水脈《みを》に、
わが恋の器楽《きがく》の海に。
あはれ、聴け、光は噎《むせ》び、
海顫ひ、清《すが》掻《がき》焦《こ》がれ
眩暈《めくる》めく悲愁《かなしみ》の極《はて》、
苦悶《もだえ》そふ歓楽《よろこび》のせて
キユラソオの紅《あか》き帆《ほ》ひびく。
弾《ひ》けよ、弾《ひ》け、毒《どく》の※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]オロン
吹けよ、また媚薬《びやく》の嵐。
あはれ歌、あはれ幻《まぼろし》、
その海に紅《あか》き帆《ほ》光る。
海の歌きこゆ、このとき、
『噫《あゝ》、かなし、炎《ほのほ》よ、慾《よく》よ、
接吻《くちつけ》よ。』
聴けよ、また苦《にが》き愛着《あいぢやく》、
肉《しゝむら》のおびえと恐怖《おそれ》、
『死ねよ、死ね』、紅《あか》き帆《ほ》響《ひゞ》く、
『恋よ、汝《な》よ。』
弾《ひ》けよ、弾《ひ》け、毒の※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]オロン
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