sおもひ》のにほやかさ、
ゆるき鞨皷《かつこ》の
音《ね》もにぶく、
古《ふる》き納曾利《なそり》の舞《まひ》をさめ……
[#ここで字下げ終わり]
今《いま》しも街《まち》の空《そら》高《たか》く消《き》ゆる光《ひかり》のわななきに、
ほのかに青《あを》く、なほ苦《にが》く顫《ふる》ひくづるる雲《くも》の色《いろ》。
また、浮《う》きのこる鬱金香《うこんかう》。暮《く》れて果《は》てたる白牛《しろうし》の
声《こえ》なき骸《むくろ》。人《ひと》だかり、血《ち》を見《み》て黙《もだ》す冷笑《ひやわらひ》。
[#地付き]四十一年七月
ほのかにひとつ
罌粟《けし》ひらく、ほのかにひとつ、
また、ひとつ……
やはらかき麦生《むぎふ》のなかに、
軟風《なよかぜ》のゆらゆるそのに。
薄《うす》き日の暮るとしもなく、
月《つき》しろの顫《ふる》ふゆめぢを、
縺《もつ》れ入るピアノの吐息《といき》
ゆふぐれになぞも泣かるる。
さあれ、またほのに生《あ》れゆく
色あかきなやみのほめき。
やはらかき麦生《むぎふ》の靄に、
軟風《なよかぜ》のゆらゆる胸に、
罌粟《けし》ひらく、ほのか
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