鼬Q《ひとむれ》のわがやから消《き》えさりゆきぬ。
もの甘き鈴の音《おと》、ああそを聴《き》けよ。
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からら、からら、ら、ら、ら……
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暮《く》れのこるピラミドの暗紅色《あんこうしよく》よ。
そが空のうち濁《にご》る重き空気《くうき》よ。
いづこにか月の色ほのめくごとし。
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からら、からら、ら、ら、ら……
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かの群《むれ》よ、靄《もや》ふかく、いまかひろぐる
色|鈍《にぶ》き、幽鬱《いううつ》の毛織《けおり》の天幕《てんと》。
駱駝《らくだ》らのためいきもそこはかとなく。
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からら、からら、ら、ら、ら……
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もの青く暮れてみな蒸しも見わかね。
饐《す》え温《ぬ》るむ空《そら》のをち、薄《うす》らあかりに、
ほのかにも此方《こなた》見るスフィンクスの瞳。
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からら、からら、ら、ら、ら……
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あはれ、その静《しづ》かなるスフィンクスの瞳。
ああ暗示《あんじ》……えもわかぬ夢の象徴《シムボル》。
またく
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