ウぐる心地《こゝち》に、
色盲《しきまう》の瞳《ひとみ》の女《をんな》うらまどひ、
病《や》めるペリガンいま遠き湿地《しめぢ》になげく。
かかるとき、おぼめき摩《なす》る Violon《※[#濁点付き片仮名ヰ、1−7−83]オロン》 の
なやみの絃《いと》の手触《てさはり》のにほひの重《おも》さ。
鈍《にぶ》き毛《け》の絨氈《じゆうたん》に甘き蜜《みつ》の闇《やみ》
澱《おど》み饐《す》えつつ……血のごともらんぷは消ゆる。
[#地付き]四十一年八月
酒と煙草に
酒《さけ》と煙草《たばこ》にうつとりと、
倦《う》めるこころを見まもれば、
それとしもなき霊《たま》のいろ
曇《くも》りながらに泣きいづる。
なにか嘆《なげ》かむ、うきうきと、
三味《しやみ》に燥《はし》やぐわがこころ。
なにか嘆《なげ》かむ、さいへ、また
霊《たま》はしくしく泣きいづる。
[#地付き]四十一年五月
鈴の音
日は赤し、窓《まど》の上《へ》に恐怖《おそれ》の烏《からす》
ひた黙《つぐ》み暮れかかる砂漠《さばく》を熟視《みつ》む。
今日《けふ》もまたもの鈍《にぶ》き駱駝《らくだ》をつらね、
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