《た》つもものうし。
眺むれどものうし、のぼる日のかげも、
大海原《おおうなばら》の空|燃《も》えて、今日《けふ》も緩《ゆる》ゆる
縦《たて》にのみ湧《わ》くなる雲の火のはしら
重《おも》げに色もかはらねば見るもものうし。
行きぬれどものうし、波ののたくりも、
懈《たゆ》たき砂もわが悩《なやみ》ものうければぞ、
信天翁《あはうどり》もそろもそろの吐息《といき》して
終日《ひねもす》うたふ挽歌《もがりうた》きくもものうし。
寝《ね》そべれどものうし、円《まろ》に屯《たむろ》して
正覚坊《しやうがくばう》の痴《しれ》ごこち、日を嗅《か》ぎながら
女らとなすこともなきたはれごと、
かくて抱けど、飽《あ》きぬれば吸ふもものうし。
貪《むさぼ》れどものうし、椰子《やし》の実《み》の酒も、
あか裸《はだか》なる身の倦《た》るさ、酌《く》めども、あほれ、
懶怠《をこたり》の心の欲《よく》のものうげさ。
遠雷《とほいかづち》のとどろきも昼はものうし。
暮れぬれどものうし、甘き髪の香も、
益《えう》なし、あるは木を擦《す》りて火ともすわざも。
空腹《ひだるげ》の心は暗《くら》きあなぐらに
蝮《
前へ
次へ
全122ページ中116ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
北原 白秋 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング