にあかる薄闇《うすやみ》。

初恋の燃《も》ゆるためいき、
帯の色、身内《みうち》のほてり。
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だらり[#「だらり」に傍点]の姿《すがた》おぼろかになまめき薫《く》ゆる舞姫《まひひめ》の
ほのかに今《いま》したたずめば、本尊仏《ほんぞんぶつ》のうすあかり
静《しづ》かなること水のごと沈《しづ》みて匂ふ香《か》のそらに、
仰《あふ》ぐともなき目見《まみ》のゆめ、やはらに涙さそふ時《とき》。

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甍《いらか》より鴿《はと》か立ちけむ、
はたはたとゆくりなき音《ね》に。

ふとゆれぬ、長《たけ》の振袖《ふりそで》
かろき緋《ひ》のひるがへりにぞ、

ほのかなる香炉《かうろ》のくゆり、
日のにほひ、燈明《みあかし》のかげ、――

もろもろの光はもつれ、
あな、しばし、闇にちらぼふ。
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[#地付き]四十年七月


  懶き島

明けぬれどものうし。温《ぬる》き土《つち》の香を
軟風《なよかぜ》ゆたにただ懈《たゆ》く揺《ゆ》り吹くなべに、
あかがねの淫《たはれ》の夢ゆのろのろと
寝恍《ねほ》れて醒《さ》むるさざめ言《ごと》、起
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