のもとに、みればをみなも。
な怨みそ。われはもくせい、
ほのかなる花のさだめに、
目見《まみ》しらみ、うすらなやめば
あまき香《か》もつゆにしめりぬ。
さあれ、きみ、こひのうれひは
よひのくち、それもひととき、
かなしみてあらばありなむ、
われもまた。――月はのぼれり。
[#地付き]三十九年四月


  一瞥

大月《たいげつ》は赤くのぼれり。
あら、青む最愛《さいあい》びとよ。
へだてなき恋の怨言《かごと》は
見るが間《ま》に朽ちてくだけぬ。
こは人か、
何らの色《いろ》ぞ、
凋落《てうらく》の鵠《くぐひ》か、鷭《ばん》か。
後《しりへ》より、
冷笑《れいせう》す、あはれ、一瞥《いちべつ》。
我《われ》、こころ君を殺《ころ》しき。
[#地付き]三十九年七月


  旅情

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――さすらへるミラノひとのうた。
[#ここで字下げ終わり]

零落《れいらく》の宿泊《やどり》はやすし。
海ちかき下層《した》の小部屋《こべや》は、
ものとなき鹹《しほ》の汚《よ》ごれに、
煤《すす》けつつ匂《にほ》ふ壁紙《かべがみ》。
広重《ひろしげ》の名をも思《おもひ》出づ。

ほどちか
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