き木の実

暗《くら》きこころのあさあけに、
あかき木《こ》の実《み》ぞほの見ゆる。
しかはあれども、昼はまた
君といふ日にわすれしか。
暗《くら》きこころのゆふぐれに、
あかき木《こ》の実《み》ぞほの見ゆる。
[#地付き]四十年十月


  かへりみ

みかへりぬ、ふたたび、みたび、
暮れてゆく幼《をさな》の歩《あゆみ》
なに惜《をし》みさしもたゆたふ。
あはれ、また、野辺《のべ》の番紅花《さふらん》
はやあかきにほひに満つを。
[#地付き]四十年十二月


  なわすれぐさ

面※[#「巾+白」、第4水準2−8−83]《ぎぬ》のにほひに洩《も》れて、
その眸《ひとみ》すすり泣くとも、――
空《そら》いろに透《す》きて、葉かげに
今日《けふ》も咲く、なわすれの花。
[#地付き]四十一年五月


  わかき日の夢

水《みづ》透《す》ける玻璃《はり》のうつはに、
果《み》のひとつみづけるごとく、
わが夢は燃《も》えてひそみぬ。
ひややかに、きよく、かなしく。
[#地付き]四十一年五月


  よひやみ

うらわかきうたびとのきみ、
よひやみのうれひきみにも
ほの沁むや、青みやつれて

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