》の古き牧場《まきば》は
なごやかに光黄ばみて
うつらちる楡《にれ》の落葉《らくえふ》、
そこ、かしこ。――暮秋《ぼしう》の大日《おほひ》
あかあかと海に沈めば、
凋落《てうらく》の市《いち》に鐘鳴り、
絡繹《らくえき》と寺門《じもん》をいづる
老若《らうにやく》の力《ちから》なき顔、
あるはみな青き旗垂れ
灰《はひ》濁《だ》める水路《すゐろ》の靄に
寂寞《じやくまく》と繋《かか》る猪木舟《ちよきぶね》、
店々の装飾《かざり》まばらに、
甃石《いしだたみ》ちらほら軋る
空《から》ぐるま、寒き石橋。――
鈍《にぶ》き眼《め》に頭《かしら》もたげて
黄牛《あめうし》よ、汝《な》はなにおもふ。
[#地付き]三十九年八月


  晩秋

神無月、下浣《すゑ》の七日《しちにち》、
病《や》ましげに落日《いりひ》黄ばみて
晩秋《ばんしう》の乾風《からかぜ》光り、
百舌《もず》啼かず、木の葉沈まず、
空高き柿の上枝《ほづえ》を
実はひとつ赤く落ちたり。
刹那《せつな》、野を北へ人霊《ひとだま》、
鉦《かね》うちぬ、遠く死の歌。
君死にき、かかる夕《ゆふべ》に。
[#地付き]三十九年五月


  あか
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