澹《あんたん》として二列《ふたならび》、
海波《かいは》の鳴咽《おえつ》、赤《あか》の浮標《うき》、なかに黄《き》ばめる
帆は瘧《ぎやく》に――嗚呼《ああ》午後七時――わなわなとはためく恐怖《おそれ》。
解纜《かいらん》す、大船《たいせん》あまた。――
黄髪《わうはつ》の伴天連《ばてれん》信徒《しんと》蹌踉《さうらう》と
闇穴道《あんけつだう》を磔《はりき》負ひ駆《か》られゆくごと
生《なま》ぬるき悔《くやみ》の唸《うなり》順々《つぎつぎ》に、
流るる血しほ黒煙《くろけぶ》り動揺《どうえう》しつつ、
印度、はた、南蛮《なんばん》、羅馬、目的《めど》はあれ、
ただ生涯《しやうがい》の船がかり、いづれは黄泉《よみ》へ
消えゆくや、――嗚呼《ああ》午後七時――鬱憂《うついう》の心の海に。
[#地付き]三十九年七月
日ざかり
嗚呼《ああ》、今《いま》し午砲《ごはう》のひびき
おほどかにとどろきわたり、
遠近《をちこち》の汽笛《きてき》しばらく
饑《う》うるごと呻《うめ》きをはれば、
柳原《やなぎはら》熱《あつ》き街衢《ちまた》は
また、もとの沈黙《しじま》にかへる。
河岸《かし》
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