こいつおもしろいとかかとをちょいとすくう、
そこで、すとんと地べたに小鼻をぶっつけた。
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 かささぎが一羽よ

かささぎが一羽よ、なしの木にとォまった。
かささぎが一羽よ、なしの木にとォまった。
かささぎが一羽よ、なしの木にとォまった。
 おおしんど、ああしんど、おおしんどよう。

うれしそに一度よ、ちちんがちんとはねた。
うれしそに二度よ、ちちんがちんとはねた。
うれしそに三度よ、ちちんがちんとはねた。
 おおしんど、おおしんど、おおしんどよう。
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 これ、これ、こいきな

「これ、これ、こいきなおむすめご、
おまえはどちらへおいでです」
「お乳しぼりにまいります」

「これ、これ、こいきなおむすめご、
わたしもいっしょに行《い》てあぎょか」
「ええ、ええ、そんならうれしいわ」

「これ、これ、こいきなおむすめご、
おまえのお父さんはなになさる」
「わたしのお父さんはおひゃくしょうよ」

「これ、これ、こいきなおむすめご、
おまえさんに財産《おたから》ありましょね」
「いえ、いえ、御器量《ごきりょう》が財産《おたから》よ」

「これ、これ、こいきなおむすめご、
そんならお嫁さんにゃちとこまる」
「いらぬおせわでござります」
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 市場《いちば》へ、市場へ

市場《いちば》へ、市場へ、乾葡萄入《プラム》ケイキかいに、
かえろよ、かえろよ、市場にゃおくれた。

市場へ、市場へ、乾葡萄入《プラム》パンかいに、
かえろよ、かえろよ、市場ははねた。
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 数学

掛け算はしちめんどう、
割り算は因業《いんごう》、
比例は人なかせ、
応用問題気がちがう。
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 眼《め》

青い眼《め》はきれい、
灰色の眼は陰気、
黒い眼は腹黒、
鳶色《とびいろ》眼玉はおばァけ。
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 五月のみつばち

五月のみつばちゃ、
乾草《ほしくさ》一駄《いちだ》よ。

六月のみつばちゃ、
銀のさじとおなじ価《ね》よ。

七月のみつばちゃ、
はえの一匹にも、つっかわぬ。
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 朝のかすみ

朝のかすみと夕焼け空は、
日和《ひより》よいとの前しらせ。
くもる日ぐれと朝焼け空は、
お寝《よ》るひつじをみなぬらす。
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 かっこ鳥

きれいな小鳥、かっこ鳥、
とびとびうたうかっこ鳥、
ないてしらするその声は、
つゆうそのないいいしらせ。

小鳥の卵すするゆえ、
なく音《ね》すずしいかっこ鳥、
はやもなきます、かっこうと、
夏がもうじきまいります。
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 豆こぞう

豆んちょの家《うち》の、
豆んちょのこぞうっこ、
よその養魚池《かいぼり》へおしかけて、
魚《さかな》をぴんぴとつりあげた。
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 ソロモン・グランディ

ソロモン・グランディは、
月曜日にうまれて、
火曜日に洗礼うけ、
水曜日に嫁とったが、
木曜日には病気になり、
金曜日にずんと重《おも》って、
土曜日におっ死《ち》ぬちゅうと、
日曜日にはうめられた。
ソロモン・グランディの御一代《ごいちだい》。
そこでおしまい、ちゃァんちゃん。
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 かえるの殿御《とのご》

お池にござるはかえるどの、
お池にござるはかえるどの、
はつかねずみは粉小屋《こなごや》に。

相手ほしやのかえるどの、
相手ほしやのかえるどの、
でんでんむしの背中にうちのって。

はつかねずみのお宿《やど》まで、
はつかねずみのお宿まで、
そこで戸たたく、ものもうす。

「はつかねずみのお姫《ひい》さま、わたしゃ其様《そさま》にあいにきた、
はつかねずみのお姫《ひい》さま、わたしゃ其様《そさま》にあいにきた、
お気にめしたか、めすまいか」

「なんとお返事いたさりょうに、
なんとお返事いたさりょうに、
まして叔父様《おじさ》のるすのうち」

ねずみの叔父御《おじご》がもどられて、
ねずみの叔父御《おじご》がもどられて、
「だれかみえたぞ、るすのうち」

「いやな殿御《とのご》がござんした、
いやな殿御《とのご》がござんした、
叔父様《おじさ》のおるすにござんした」

そこでなきなき、かえるどの、
なきなき、小川をかえるどの、
めがものお上※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]《じょうろう》とであわしゃる。

よいものみつけた、ござんなれ、ござんなれ、
めがものお上※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]《じょうろう》に、かえるどの
ぱくとのまれてきゅうきゅうきゅう。

 さてもあわれな物語、
 ここらあたりで、あなかしこ。
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 一切空

一切空《いっさいくう》ちゅうおばあさんがどこかしらにござった。
豆っちょろのお家《いえ》におさまりかえってござった。
そこへだれだかぬうとでて、
かっと口あけ、すう、ぱくり。
お家《うち》もおばあさんも一切空。
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 ロンドン橋

ロンドン橋《ばし》がおちた。
ロンドン橋がおちた。

なんでこんどかけるぞ。
なんでこんどかけるぞ。

銀と金とでかけてみろ。
銀と金とでかけてみろ。

銀も金もぬすまれた。
銀も金もぬすまれた。

鉄と鋼鉄とでかけてみろ。
鉄と鋼鉄とでかけてみろ。

鉄でも鋼鉄でもへしまがる。
鉄でも鋼鉄でもへしまがる。

材木と粘土とでかけてみろ。
材木と粘土とでかけてみろ。

材木、粘土はながされる。
材木、粘土はながされる。

そんなら石でかけ、そりゃ丈夫《じょぶ》だ。
千年万年|大丈夫《だいじょぶ》だ。
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 世界じゅうの海が

世界じゅうの海が一つの海なら、
どんなに大きい海だろな。
世界じゅうの木という木が一つの木ならば、
どんなに大きな木であろな。
世界じゅうの斧《おの》が一つの斧なら、
どんなに大きな斧だろな。
世界じゅうの人たちがひとりの人なら、
どんなに大きな人だろな。
大きなその人がおおきな斧をとって、
大きな木をきり、
大きなその海にどしんとたおしたら、
それこそ、どんなにどんなに大きい音だろな。
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 空はじめじめ

空はじめじめ、
雨もよい、
ちっちゃなおじいさんにでおうたら、
身ぐるみ革《かわ》きて、
あごに無縁帽《シャッポ》つんだして、
「おさむう、おさむう、こんにちは」

空はじめじめ、
おわかれと、
よぼよぼなかまが手をにぎり、
身ぐるみ革きて、
あごに無縁帽《シャッポ》つんだして、
「さよなら、さよなら、またいつか」
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 アアサア王

アアサア王の御治世《ごじせい》じゃ、
アアサア王はよいかたで、
挽割麦《ひきわり》三斤《さんぎん》ぬゥすんで、
袋形《ふくろなり》のプッジングをこさえよか。

いよいよ王さまのお手製で、
それには山もり乾《ほし》ぶどう、
拇指《おやゆび》二つよりかまだふとい
脂肉《あぶらにく》を二塊《ふたきれ》どしこんだ。

王さまとおきさきとがまずめして、
つぎに大臣たちがおしょうばん、
そしてその夜のおあまりは、
翌朝《よくあさ》おきさきが油揚《あぶらあ》げ。
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 がぶがぶ、むしゃむしゃ

どうしたことだえ、このおばば、
のんだりくったり、そればかり、
ほかにはなんにもようせぬで、
くうのとのむのが商売かい、
むしゃむしゃ、がぶがぶ、ぐずりばば、
ぶつぶつぶつぶつまだやめぬ。
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 天竺《てんじく》ねずみは

天竺《てんじく》ねずみは追っかけごっこがだいすきだ。
 ツラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ。
捕《とら》よとおもうならまず駈《か》けた、
それ手をはなした、
どっちがはやいか。
 ツラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ。
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 ジャック・スプラットと

ジャック・スプラットとその嚊《かか》さ。
じいさはたべてもやせこけだ、
ばばさはふとっても意地汚《いじぎた》だ。
ふたりの間中《あいなか》を、ちょとごらん、
お皿はすべすべなめてある。
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 背骨《せぼね》まがり

背骨《せぼね》まがりのあまのじゃく、
背骨まがりの旅をして、
背骨まがりの石段で、
背骨まがりの六ペンスをひろい、
背骨まがりのねこを買い、
背骨まがりのねずみをとらせ、
背骨まがりの豆んちょの家《いえ》に、
背骨まげまげおさまった。

  (注)あちらでは、つむじまがりのことを背骨まがりと申します。
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 おらがお父《とと》は

おらがお父《とと》はおっ死《ち》んだ。
何《あん》といってええだが、こちゃしらぬ。
うまを六匹くんさんし。サテ、
犁《すき》でもってすけちゅうだ、おえちゅうだよ。

うまを六匹売っとばし、
めうしを一匹、こちゃ買ってな、
一身上《ひとしんしょう》あんべとごきげんだ。サテ、
何《あん》としてええだが、まだしらぬ。

そこでめうしを売っとばし、
ふくらはぎを一本、こちゃ買ってな、
一身上あんべとごきげんだ。サテ、
極上肉を半ぺら、またなくす。

そこでふくらはぎを売っとばし、
めねこを一匹、こちゃ買ってな、
あまっちょのねこめも愛《う》いやつじゃ。サテ、
煙突《けむだし》のすみっこに、ちょんとすわる。

またまたねこめを売っとばし、
はつかねずみを、こちゃ買ってな、
尻尾《しっぽ》つまんで火になげた。サテ、
おらのお家《うち》がぼうともえた。
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 ねこと王さま

さてもこのたび、ねこが王さまに御拝謁《ごはいえつ》、
ごぶじにおさまりゃ、しあわせだ。
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 がァがァ、がちょう

がァ、がァ、がちょう、
うろついてどこいこ、
階上《かいじょう》を、下《した》を、
おくさまのへやで、
じじいにであった、
そのじじいどうした、
不信心《ぶしんじん》ないやなやつ、
そこで、そいつの左の足をすくって、
すってんころりとあがり段からころがした。
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 火の中に

火の中に石脂《タアル》、
樫《かし》の中にはすっからかん。
泥《どろ》の中《なァか》にうなぎ、
粘土の中にはすっからかん。
やぎが蔦《つた》くう。
めうまが麦くう。
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 火ばしの一対

足なが、せむし、
小頭《こあたま》、眼《め》なし、
それなァに。
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 お月さま光る

おじょっちゃん、おぼっちゃん、外へでてあすぼ、
お月さま光る、昼のようにあかる。
口笛ふいてきなよ、よばわってきなよ。
上々きげんででてきなよ。でなけりゃおことわり。

夕飯《ゆうめし》うっちゃって、石盤《せきばん》うっちゃって、
街へでてきなよ、あそびなかまがまっているに。
ときの声あげて、とんだりはねたりしておいで、
お月さまの光にぐるぐるまわっておどりましょう。

あがり段にのぼり、石垣とびおりて、
ころがしゃお銭《ぜぜ》がなにもかもくれる。
牛乳が買える、はちのみつが買える、
半時《はんとき》たたずにおまんじゅうが買える。
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 おもちゃのうま

はいしどうどう、
おうまにのって、
チャアリング・クロスへいてみよか。
きれいなレディが、
白いうまにのって、
お手々に指輪、
おくつに鈴つけ、
ちんからちんからとおる、
それみにいこか。
ちんからちんから、りんりん。
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 なけなけ

なけなけ、赤ちゃん、
眼玉にお指をつっこみな。
そしてお母《か》さんへ行ったらば、
あれはぼうやじゃないとおいい。
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 北風ふけば

北風ふけば、
雪がふろ、
かわいそなこまどりはどうするぞ。
   かわいそなものね。

お倉の中《なァか》の刈麦《かりむぎ》に、
もゥぐりこゥぐり、ぬくもろぞ、
お羽根の裏《うゥら》に首まげて。
   かわいそなものね。
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 めくら鬼

めくら鬼、めくら鬼、
めん眼《め》がみえないごぞんじか、
くるくる三遍まァわって、
わたしをつかめてごらんなね、
こォろぶなころぶな、
だれでもいいからとっつかめ。
わたしはこっちだよ、とっつかまえたとおおもいか。
笑止《
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