「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれはチイズさ」と三番目のがいいのけた。――
「二つわりにしたその半分きりさね」

またもいちんち猟《かり》をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたは木いちごやぶのはりねずみ。
それをうしろにとおりすぎてしまう。

「あれははりねずみだ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれは針さしさ」と三番目のがいいのけた。――
「よくもめちゃくちゃにお針をさしたもんだすな」

またも夜っぴて、猟をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたはかぶら畑《ばたけ》の野うさぎだ。
それをみすててまたいってしまう。

「あれは野うさぎだ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれはこうしさ」と三番目のがいいのけた。――
「あいつ、めうしにおきざりされたやつだんね」

またもいちんち、猟をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
みたは洞木《うろぎ》の分別顔《ふんべつがお》のふくろうよ。
それをうしろにまたいってしまった。

「あれはふくろうだ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれはじじいさ」と三番目のがいいのけた。――
「それそれごましお頭の髪の毛をみさいな」
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 鼻まがり

あいつぁよっぽどみょうだ、まっすぐにゃゆかぬ。
そのわけしってるか、
鼻のむいたほうへむいてゆく。
どうりで、やっこさん、鼻まがり。
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 あの丘のふもとに

あの丘のふもとに
おばあさんがござった。
もしも去《い》なんだら
まだ住んでござろ。
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 あたいのめうし

あたいのめうしはちっぽけだ。
 ひょろひょろ、ひょっこり、ひょっこりよ。
あたいのめうしは、ちっぽけだ、
めうしのふくらはぎはちっぽけだ。
 ひょろひょろ、ひょっこり、ひょっこりよ。
あたいのお歌はまだなかば。

あたいのめうしはちっぽけだ。
 ひょろひょろ、ひょっこり、ひょっこりよ。
あたいのめうしはちっぽけだ。
やっとこうし小屋へおいこんだ。
 ひょろひょろ、ひょっこり、ひょっこりよ。
そこでお歌もちゃんちゃんだ。
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 ゆりかごうた

ねんねや、ねんねや、おねんねや、
ぼうやがお父《とう》さんひつじ守《も》り。
お母《かあ》さんはねんねのねむりの木、
ねんねやねんねとゆすりましょう、
ゆすればお夢がふりかかる。
ねんねや、ねんねや、おねんねや。
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 こびっちょの子供は

こびっちょの男の子はなんでつくる、なんでつくる。
こびっちょの男の子はなんでつくる。
 かわずとででむしとこいぬのしっぽでつくられた。
 それそれ、こびっちょの男の子がつくられた。

かわいい女の子はなんでつくる、なんでつくる。
かわいい女の子はなんでつくる。
おさとうに薬味《やくみ》に、あまいものずくめ。
 それそれ、かわいい女の子がつくられた。
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 ねんねこうた

ねんねこ、ねんねこ、ねんねこや。
なァいてお母《か》さんをなかすなや、
なかれりゃわたしもつろござる。
ねんねこ、ねんねこ、ねんねこや。
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 はしっこいジャック

はしっこいジャック、
すばやいジャック、
ろうそくたて一つ、
ジャックが
とびこした。
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 ででむし、でむし

ででむし、でむし。
 ぬすっとがくるぞ、おめんちの壁を
 ぶっこわしにくるぞ。
ででむし、でむし。
その角だせよ。
 ぬすっとがくるぞ、小麦をとりに、
 ぬすっとがくるぞ、夜あけの四時に。
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 一列《いちれつ》こぞって

一列《いちれつ》こぞって、
弓をひき、
おはとを射ったら、
からすめをころした。
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 ででむし

ででむし、ででむし、角だせや。
パンとお麦を、それ、あげよ。
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 おりこうさん

とてもがむしゃら、おりこうさん、
いきなりばんばら藪《やぶ》へとびこむと、
眼玉《めだま》がポンポンひんむけた。

おやおやっ、眼玉がつん出たら、
それこそこんどはくそ力、
横っちょの小藪へとびこんだ。
そしたら眼玉がすっこんだ。
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 おしゃべり

やまがらのおしゃべり、
お舌《した》がさけよぞ。
町じゅうのいぬが
ちんぢんにかんじゃうぞ。
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 ハアトのクイン

ハアトのクインが饅頭《タアト》をつくられた。
みんなできたよ、夏の日いっぱいかァかった。

ハアトの兵士《ネイブ》が饅頭《タアト》をぬゥすんだ。
こいつしめたとそっくりもってにげてった。

ハアトのキングが饅頭《タアト》とおっしゃった。
そりゃこそたいへん、兵士《ネイブ》を御折檻《ごせっかん》なすった。

ハアトの兵士《ネイブ》が饅頭《タアト》をかえした。
まっぴら閉口《へいこう》して、もうもういたしません。
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 コケコッコおどり

コケコッコ、コケコッコ、コケコッコ。
おくさんがおくつをなァくした。
だんなさんがヴァイオリンの弓をなくし、
どうしていいのかおおよわり。

コケコッコ、コケコッコ、コケコッコ。
おやおや、おくさんどうなさる。
だんなさんがヴァイオリンの弓をさがす、
それまで、はだしでおおどりか。

コケコッコ、コケコッコ、コケコッコ。
おくさんがおくつをなァくした。
だんなさんがヴァイオリンの弓をみつけ、
それきた、コケコッコ、コケコッコ。

コケコッコ、コケコッコ、コケコッコ。
さあさあ、おくさん、それおどろ。
だんなさんがヴァイオリンの弓をこすり、
それそれおどれと、コケコッコ。

コケコッコ、コケコッコ、コケコッコ。
おくさんがおくつをなァくした。
ねてもねられずおおよわり、
頭の髪毛《かみげ》もめっちゃくちゃ。
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 でんでんむしむし

でんでんむしむし、
角ひけよ。
ひかなきゃ山椒《さんしょ》の粒《つぶ》ふりかける。
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 おばあさんとむすこ

ひとりのおばあさんと三人のむすこ、
ジェリイ、ジェムス、それにまたジョンよ。
ジェリイは首くくった。ジェムスはおぼれた。
ジョンはどこかへいなくなってしまった。
だァれもみつけたものがない。
三人のむすこがみんなしんでしまった。
ジェリイ、ジェムス、それにまたジョンよ。
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 てんとうむし

てんとうむし、てんとうむし、
はよう家《うち》へかえれ、
おまえの家《うち》ゃ火事だ。
みんな子供がやけしんだ。
むすめのアンヌがたったひとり、
プッジングのなべの下に
つんぐりむんぐりもぐった。
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 あったかいパン

あったかいパン、
あったかい、あったかい、あったかいパン。
一ペンニイで一つ、二ペンニイで二つ、
あったかいパン。
おまえにむすめがないならば、
おまえのむすこにおあげなえ。
一ペンニイで一つ、二ペンニイで二つ、
あったかいパン。
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 ゴットハムの三りこう

さてもゴットハムの三りこう、
おわんにのっかって海へでた。
もそっとおわんがしっかりさえしてりゃ、
ここらでこの歌もきれやしまい。
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 気ちがい家族

気ちがいの御亭主に、
気ちがいのおかみさん、
気ちがい小路《こうじ》に住んで、
三つ児をうんで、
どの児もどの児も気がちごた。
 お父さんが気ちがい、
 お母さんが気ちがい、
 みんな子供が気ちがい。
気ちがいうまにのって、
いっしょくたに、みんなのって、
まっくら三宝《さんぼう》に、かけてった。
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 ちっちゃなだんなさま

あたいのちっちゃなだんなさま、
拇指《おやゆび》よりかもまだちさい。
こまめのおつぼにちょいといれて、
どんがどんがはやしてせりあげよ。

ちっちゃなおうまも買《こ》うてあぎょ。
そして、とっととかけさして、
たづなとらせて、くらおいて、
さあさ、ねりだそ、町の外。

かわいいくつした結《いわ》くなら
それにはちっちゃなとめ金具《かなぐ》、
ちっちゃなお鼻をふきゃるには
かわいいちっちゃなハンカチフ。
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 一つのたるに

一つのたるに、三人はいり、
どんどこ、どんどこ、すっどんどん。
あいつらだれだ。
肉屋にパン屋、
ろうそく屋の亭主。
つっころがしてしまえ。
しようのねえやつらだ。
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 ジャックとジル

ねんねの小鳥が岡《おか》に二羽、
一羽がジャックで、ほかのがジルよ。
とんでったジャックが、
 とんでったジルが、
またきたジャックが、
 またきたジルが。
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 トムトムぼうず

トム、トム、トムぼうず、
笛ふきのむすこ、
ぶたをぬすんでにげたはよいが、
ぶたはたべられ、トムぁぶったたかれ、
ないておんおん街をかけた。
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 いぬはぼうおう

いぬはぼうおう、
ねこはみゅうみゅう、
おぶたはぐるんぐるん、
ねずみはすけえく。

ふくろはつうふう、
からすはかうかう、
めがもはくゎっくくゎっく、
うしもうもう。
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 ちいさなおじょっちゃん

額《ひたい》のまんなかに、きらきらちぢらした
ちいさなまきげの、
ちいさなおじょっちゃん、
ごきげんいいときゃ、
それはそれはいい子で、
おわるいときにはこォわい子。ソレ、こォわい子。
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 やぶ医者

やぶ医者のフォスタアさんが、
グロオスタアへいって、
にわか雨にあって、
水たまりに立ち往生して、
おへその上まで水びたり。
それから二度とはようゆかぬ。
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 きれいずきのおかみさん

お月さんのおとりもちでお嫁にござった。
 きれいずきの、世帯《しょたい》もちの、しまりやのおかみさんだ。
おひるにでもならなきゃなんとしてもおきない。
 ほんとにしまるなら、それこそたのむよ。
 
やっとこさとおきればおもいきってせかせか、
 きれいずきの、世帯もちの、しまりやのおかみさんだ。
灰かきで麦っ粉《こ》をやっさもっさこねます。
 ほんとにしまるなら、それこそたのむよ。

ながぐつにどろどろどしこんだバタをよ、
 きれいずきの、世帯もちの、しまりやのおかみさんだ。
ひっかき棒のかわりにお足でべっちゃべっちゃ。
 ほんとにしまるなら、それこそたのむよ。

チイズは台所の物置のおたなに、
 きれいずきの、世帯もちの、しまりやのおかみさんだ。
ひとりでにころげるまでうっちゃっちゃってかまわない。
 ほんとにしまるなら、それこそたのむよ。
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 御婚礼

ぶうん、ぶうん、ぶうぶうぶ。
はえがくまんばちにお嫁いり、
いよいよ教会へいきやして、首尾よく御祝儀あいすんだ。
はえとくまんばちの御婚礼。
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 タッフィ

タッフィはウェルス人、タッフィはどろぼう。
わたしの家《うち》にやってきて、牛肉|一塊《ひとくれ》ぬゥすんだ。
タッフィの家《うち》へいったらば、タッフィはいなかった。
タッフィがやってきて、髄骨《ずいこつ》一本ぬゥすんだ。
タッフィの家へいったらば、タッフィはいなかった。
タッフィがやってきて、こんどは麺棒《めんぼう》ぬゥすんだ。
タッフィの家へいったらば、タッフィはねていた。
そこで火棒《ひかき》とって、そいつの頭になげつけた。
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 ばばァ牛

黒白まだらの御面相は、
チャアレエ・ワアレエの女郎牛《めろうし》だ。
その木戸あけねえか、おとおりじゃ。
チャアレエ・ワアレエのばばァ牛。
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 とっぴょくりん

とっぴょくりんのとん吉が、
とっぴょくりんのとん吉が、
おまんじゅうをいただいて、
そとがわだァけのォこした。
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 卵うりましょうと

卵うりましょうと、わしがゆく道で、
でおうた、でおうたよ、ねじれ足とでおうた。
足はねじれ足、爪《つめ》まがり爪《づめ》、

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