大きな鐘の声。

さあきた、手燭《てしょく》がお床《とこ》へおまえをてらしにきた。
さあきた、首切り役人がおまえのそっ首ちょんぎりに。

  * ファシングは一ペンニイの四分の一。
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 おうまのり

レディのうまのりゃ、
 ツリイ、ツレ、ツレエ、
 ツリイ、ツレ、ツレエ。
レディのうまのりゃこんなもんよ、はい。
 ツリイ、ツレ、ツレエ。ツリ、ツレ、ツレエ。

ゼンツルマンのうまのりゃ、
 ガロップ・エ・ツロット。
 ガロップ・エ・ツロット。
ゼンツルマンのうまのりゃこんなもんだ、ほい。
 ガロップ・エ・ツロット、ガロップ・エ・ツロット。

おひゃくしょうのうまのりゃ、
 ホッブルデイ・ホイ、
 ホッブルデイ・ホイ。
おひゃくしょうどんのうまのりゃこんなもんじゃ、はあ。
 ホッブルデイ・ホイ、ホッブルデイ・ホイ。
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 小径《こみち》にむすめ

小径《こみち》のほとりにひとりのむすめが、
なんだかいってるけど、はっきりゃいえないで、
 ぐっつ、ぐっつ、ぐっつぐつ。

むこうの小岡にひとりの男が、
たってはいれども、じっとしちゃいられず、
 ひょっこり、ひょっこり、ひょっこりしょ。
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 月の中の人

月の中の人が、
ころがっておちて、
北へゆく道で、
南へいって、
凝《こご》えた豌豆汁《えんどうじる》で、
お舌をやいてこォがした。
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 十人のくろんぼの子供

十人よ、くろんぼの子供が十人よ。
おひるによばれてゆきました。
ひとりがのどくびつまらした。
そこで、九人《くにん》になりました。

九人《くゥにん》よ、くろんぼの子供が九人《くゥにん》よ。
どの子もどの子もあさねぼうで、
ひとりがとうとうねすごした。
そこで、八人になりました。

八人よ、くろんぼの子供が八人よ。
いっしょに*デボンを旅してて、
ひとりがとちゅうでとどまった。
そこで、七人《しちにん》になりました。

七人よ、くろんぼの子供が七人よ。
木ぎれきりにとみないって、
ひとりがまふたつに腹きった。
そこで、六人になりました。

六人よ、くろんぼの子供が六人よ。
はちの巣いじって、かまってて、
ひとりがくまんばちにさァされた。
そこで、五人になりました。

五人《ごォにん》よ、くろんぼの子供が五人《ごォにん》よ。
けんかしてお訴訟をおォこした、
ひとりが裁判所へゆきました。
そこで、四人になりました。

四人《よォにん》よ、くろんぼの子供が四人《よォにん》よ。
みんなで海へとでかけたら、
赤いにしんにひとりがのォまれた。
そこで、三人《さんにん》になりました。

三人よ、くろんぼの子供が三人よ。
こんどは動物園へいったれば、
くまめがひとりをひん抱《だ》いた。
そこで、ふたりになりました。

ふゥたりよ、くろんぼの子供がふゥたりよ。
かんかん日だまりィすわりこみ、
ひとりがちぢれてやけしんだ。
そこで、ひとりになりました。

ひィとりよ、くろんぼの子供がひィとりよ。
いよいよ、たったひィとりよ、
その子がお嫁とりにでていった。
そこで、だァれもなくなった。

 * デボンはイギリスの西南部の一県で、デボンシイルのことです。
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 お月さまの中のおひとが

お月さまの中のおひとが、
お月さまの外をながめて、
そして、こうおっしゃるわ。
いま、いま、わたしはおきかかる。
赤子《ねんね》のみんなはいまお寝《よ》る。
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 クリスマスがきますわい

右や左や、クリスマス。
がちょうがふとってめえりやす。
どうぞや一《いち》ペンニイ、
じいめが帽子にほうりこんでくだされ。
一ペンニイがおいやなら半ペンニイでもようござる。
半ペンニイでもないならば、
ごきげんよろしゅう、だんなさま。
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 べああ、べああ、ブラック・シイプ

べああ、べああ、ブラック・シイプ
おまえはいい毛をおもちだろ。
はい、はい、ふくろに三《み》ふくろござります。
だんなさまに一《ひと》ふくろ、
おくさまに一ふくろ、
だっけど、そこらの細道で、
べそかくぼっちゃんにゃ、いィやいや。
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 ろうそく

ちびこ、
なまえはナンシイ・エッチコウト、
白いペッチコウトに
赤い鼻もって、
ながくたってるほど、
みじかくなってしまう。
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 ちっちゃなテイ・ウイ

ちっちゃなテイ・ウイは海へゆき、
たななしボオトにのりこんで、
ゆらゆらゆられているうちに、
ちっちゃなボオトがひっくりかえり、
これでお話もおォしまい。
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 三月、風よ

三月、風よ。
四月は雨よ。
五月は花の花ざかり。
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 お面もち

グレゴリイ・グリッグスさんは、
グレゴリイ・グリッグスさんは、
二十と七つのお面《めん》もちでおじゃって、
とっかえ、ひっかえ、ひっかえ、とっかえ、
街《まち》じゅうをやんやとわらわせる。
東へいっちゃひっかぶり、
西へいっちゃひっかぶり、
それでも、どの面がいちばんおすきか、
やっぱり御本人でおいいやれぬ。
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 ししと一角獣《いっかくじゅう》

ししと一角獣《いっかくじゅう》と
ふたりで王位をせりあった。
ししがつよかったで、
街を上下《うえした》おおあばれ、
そこで、白パンやったり、
黒パンやったり、
乾葡萄《プラム》入ケイキやったり、
やっとこすっとこおいだした。
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 くつやさん

くつやさん、おうち。
はい、はい、こんにちは。
おくつのつくろいたのみます。
よしきた。合点《がてん》だ。
こちらに一釘《ひとくぎ》、そちらに一釘、
とんとんとんのとん。
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 きれいなくびまき

ジイニイ、むすびにきとくれよ。
ジイニイ、むすびにきとくれよ。
ジイニイ、むすびにきとくれよ。
  わたしのきれいなくびまきを。

わたしはうしろでむすんでよ。
わたしは前《まァえ》でむすんでよ。
わたしは何度もむすんでよ。
  もうもうわたしはかまやせぬ。
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 何人何びき何ぶくろ

セント・イブへとわしがおまいりするときに、
わしがあったは男ひとりにおかみさんが七人《しちにん》、
そのどのおかみさんもふくろを七つ、
そのどのふくろにもねこめが七つ、
そのどのねこにもこねこが七つ。
セント・イブへとおまいりするのが、
さてさて、何人《なんにん》何《なん》びき何ぶくろ。
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 のむもの

世界が一つのパイなら、
海がすっかりインキなら、
木がまたチイズとパンならば、
おれたちののむものそりゃ、なんだ。
それこそ甲羅《こうら》経《へ》たじじいめでも
頭をかかえてちょいとまいろ。
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 ちびねこ、さんねこ

「ちびねこ、さんねこ、かわいの子、
どこへおまえはいってたの」

「あたいはいってたの、ロンドンに、
おめみえしたのよ、女王さまに」

「ちびねこ、さんねこ、かわいの子、
そこでおまえはなにしたの」

「そうそ、玉座のおいすもと、
ねずみをちょろまかつかまえた」
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 雨もよう

いぬとねことがお友達にあいに、
ちょいと、街《まち》からつれだってまいる。
ねこがもうします。
「お天気はどうでしょね」
いぬがもうします。
「さようさ、おくさんえ、雨がふりそでござんすが、
御心配はいりません、てまえがこうもり傘《がさ》もってますでな。
そのときゃごいっしょに、相合傘《あいあいがさ》とはいかがでしょ」
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 ポウリイ、やかんを

ポウリイ、やかんをかけときな。
ポウリイ、やかんをかけときな。
ポウリイ、やかんをかけときな。
  みんながのむんだ、お茶ァだよ。

スケイ、そいつをおはずしな。
スケイ、そいつをおはずしな。
スケイ、そいつをおはずしな。
  みんながもうもう行《い》っちゃうぞ。
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 南瓜《パンプキン》ずき

ペエタアさん、ペエタアさん、南瓜《パンプキン》ずき、
女房もってもお守《も》りができず、
南瓜《パンプキン》の殻《から》にと、どしこんで、
やっとこ、ほくほくお守りした。
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 ぼう、うぉう、うぉう

ぼう、うぉう、うぉう、
おまえさんどこのいぬ、
わたしゃティンカアさんのいぬですよ、
ぼう、うぉう、うぉう。
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 三百屋《さんびゃくや》

トムミイ・ツロットさん、三百屋《さんびゃくや》、
ベッドを売って、
わらの上へごろりよ。
そのわら売って、
草の上へごろりよ。
そしておかみさんに姿見鏡《すがたみ》一つ買《こ》うてくりょ。
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 お釘《くぎ》がへれば

お釘《くぎ》がへれば、
蹄鉄《かなぐつ》うせる。
蹄鉄《かなぐつ》へれば、
おうまがうせる。
おうまがへれば、
のりてがうせる。
のりてがへれば、
戦《いくさ》がうせる。
戦《いくさ》がないと、
王さまのお国ゃうせる。
おうまの蹄鉄《かなぐつ》がへったせいでよ。
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 二十四人の仕立屋

二十四人の仕立屋が
ででむしころしに、えっさっさ。
めったにしっぽにゃふれまいぞ。
そりゃこそででむしが角《つの》だした、
ちっちぇえカイロうしそっくりだ。
にげにげ、にげなきゃいまにもころされる。
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 ででむし角だせ

ででむし、ででむし、角だせや、
お父《とう》さんもお母《かあ》さんもしんでしもうた。
おまえの御兄弟姉妹《ごきょうだい》は裏《うら》ん口《くち》の庭で
パンをおくれェと乞《こ》うている。
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 お針みつけたら

お針みつけたらつまみあげておとりな。
 その日いちんちいいことばかり。

お針みつけてそのまましときゃ
 その日いちんちわるいことばかり。
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 風よ、ふけ、ふけ

風よ、ふけ、ふけ、
ひきうすまわせ、
粉屋粉ひき、
パンやさんがこねて、
朝はほやほやふかしたて。
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 気軽な粉屋

気軽な粉屋が
デイ河《かわ》にござる。
朝から晩まで
はたらいちゃうたう。
ふざけてばっかり、
一つことばかり、
おきまり文句で
一つことばかり。

『だれにかまうもんか、いやいや、わたしゃ、よ。
だれがかまうかよ、このわしに。ホイソラ、ホイソラ』
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 いなかっぺえ

いなかっぺいのおたずねだ。
『いちごが何本海にある』
うまく返事をしてのきょか。
『何匹《なんびき》にしんが森にいる』
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 おかごのばあさん

おばあさんがひとりおかごにのって、
ふらふらあがる。
月よりたかく、九十倍《くじゅうばい》もたかく、
どこへゆくのか、きこうにもきけず、
お手々にほうきをもって、あれあれあがる。
『おばあさん、おばあさん、おばあさん、
どこへゆくの、どこへ、
そんなにたかくあァがって』
『円天井《まるてんじょう》のすすはきじゃ』
『はァやくかえってちょうだいよう』
『あい、あい。ちょっくら、いますぐだ』
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 すっとんきょうな南京《なんきん》さん

すっとんきょうな南京《なんきん》さんがお三《さん》かたござった。
それは皆さまとくより御承知だ。
きゃっきゃさわいで猟《かり》にとでかけた。
しかも、めっそうもない、安息日《あんそくび》にでござる。

永《なが》のいちんち、猟《かり》をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたは帆《ほ》かけた船よ。
それが追風《おって》にしゅっしゅっとはしった。

「あれは船だ」と一番さきのがいいだした。
「なんの、うそだ」と二番目のがうちけした。
「あれは家《うち》さ」と三番目のがいいのけた。――
「こわれ煙突《えんとつ》までとっついてるじゃないかいな」

永《なが》の一晩《ひとばん》猟《かり》をしてまわり、
これというもの根っから葉っからみつからない。
一つみつけたはおすべり屋のお月さんだ、
それがふかれてつるつるとすべった。

「あれはお月さんだ」と一番さきのがいいだした
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