う。わしもな、きょうは気分がいつになくすぐれているのじゃ。こういう時に仕事をすれば、きっとうまくゆこう。」
馬上の上人はこういって微笑する。喜海と呼ばれた若者は種壺を抱えて、馬のしりえに引き添って、「さあ、よろしゅうございます」と、いかにも慎しみふかく申し上げて、馬の歩みだすのを待っている。
上人は馬の手綱を無造作に操る。馬は器械か何かのように動きだす。それでも柔らかい畑地に馬の蹄《ひづめ》はそれ相応の穴を掘ってゆく。その穴に、喜海と呼ばれた弟子は一つ一つ種ものを投げこんでいる。傍《はた》からでは、それがどういう種であるかは想像されない。麦や豆類とはちがって、もう少し大振りな種である。
馬蹄の跡の窪だまりに放りこまれた種は、喜海の手で丁寧に土がかぶせられる。見る見るうちに、こうやって一|反歩《たんぶ》の種播は終りを告げる。
蒼みがかった夢の雰囲気がますます濃《こま》やかになる。今やあたりは真青に染められて、そこからほのかの匂いがたっている。夢というものにも鋭敏な感受性があるにちがいない。そしてみずから発《はな》つ芳香におのが官能を酔わしめて、ひそやかに楽しんでいる。それが、ほの
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