かに、かすかに、香に立ってきこえてくるのであろう。
 工作を終った上人とその弟子は、その畑地を見わたして快心のえみをたたえている。
「上人さま、早いものでございます。ご覧ください。あそこあたりはもう芽を吹きだしてまいりました。」
「おお、そうか」と上人はいった。「種も粒選《つぶよ》りであったし、日もよかったし、気分もすぐれていたし、それにここの畑土は肥えているのだ。三拍子も四拍子も揃っていたからだな。」ゆっくりした口調である。
 喜海は「ごきげんで結構でございます。これならきっと日本一の茶畑になりましょう。地味《ちみ》もよほどよろしいようでございます」といってよろこんでいる。
「わしはよく夢ばかり見るが、その中でもきょうの夢は夢の中の夢のような気がするな。わしがふだんよくよく注意してそちに教えていた、あの海印三昧だがな。その海印三昧がこの畑地の鏡のおもてに実現しておるのじゃ。華厳の教理に関して、わしがむずかしいことばかり言っていたように、喜海、そちは思っていたろう。そんなことではいけないのだ。まずこの畑をようく見極めること。それが修行だ。いいか。」
「はい。仰せのとおりに一所懸命になっ
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